現在、"がん(がん細胞)" にせよ、"アルツハイマー病(神経細胞)" にせよ、その病気解明と治療法の模索において、細胞レベルの現象である "細胞の死" という局面がスポットライトを浴びている。
このことは、いわば "iPS 細胞" が "細胞の誕生/生成" という点で注目されるのと対照的に、"細胞の死" という局面の問題もまた大きな現代的意義を持つことを示しているかに思われる。
"がん" の場合には、"がん細胞の死" が如何にして可能となるのかに関心が向けられ、"アルツハイマー病" の場合には、"神経細胞の死" がどうすれば回避できるのか、が追及されているわけだ。
そして、この "細胞の死" という現象で注目され続けているのが、"免疫システム" のジャンルの研究で明らかになりつつある "アポトーシス(細胞の自殺?!)" という興味深いメカニズムである。
<多細胞動物の細胞は、発生の過程で、あるいはX線や抗がん剤などDNAを損傷するストレス刺激や、細胞へのウイルス感染やがん化させる刺激など、さまざまな刺激に対する生体防御機構の一つとして、自らアポトーシスを起こして自殺する機構を持っている> ( 下記の ◆ 参照関連記事より )
今回注目する下記引用サイト記事 : 東大、老化によって嗅覚神経の細胞死が起きることを明らかに/財経新聞/2014.06.28 - 19:22 は、こうした "アポトーシス" 現象が、特別異常な刺激を被らなくとも、"自然な老化、正常な老化" の過程においても発生する、との研究成果を報じている。
<東京大学の千原崇裕准教授らによる研究グループは、ショウジョウバエの嗅覚神経細胞が老化によって死んでいることを明らかにした/ 老化による脳機能の低下に関して、神経変質疾患を患っている場合の細胞死については研究がおこなわれていたものの、正常な老化における細胞死についてはほとんど研究されていなかった/ 今回の研究では、モデル動物としてショウジョウバエを使い、細胞死を引き起こす酵素「カスパーゼ」がリンゴ酢や酵母の匂いを感知するOr42b神経細胞で活性化していることを突き止め、実際に老化したショウジョウバエはこの神経細胞の数が減少していることを明らかにした。この結果から、老化によって嗅覚神経細胞が細胞死することや、それによってショウジョウバエが異常な行動をすることが分かった/ 一般に、老化に伴って嗅覚機能は低下する。また、パーキンソン病を含む神経変性疾患でも運動機能障害に先だって嗅覚機能低下が現れる。今回の研究成果は、正常な老化の過程で神経細胞が細胞死することの意義や分子機構に迫るとともに、神経変性疾患で神経細胞が細胞死する原因と発症機序の理解に繫がることが期待される> とある。
東大、老化によって嗅覚神経の細胞死が起きることを明らかに/財経新聞/2014.06.28 - 19:22
東京大学の千原崇裕准教授らによる研究グループは、ショウジョウバエの嗅覚神経細胞が老化によって死んでいることを明らかにした。
老化による脳機能の低下に関して、神経変質疾患を患っている場合の細胞死については研究がおこなわれていたものの、正常な老化における細胞死についてはほとんど研究されていなかった。
今回の研究では、モデル動物としてショウジョウバエを使い、細胞死を引き起こす酵素「カスパーゼ」がリンゴ酢や酵母の匂いを感知するOr42b神経細胞で活性化していることを突き止め、実際に老化したショウジョウバエはこの神経細胞の数が減少していることを明らかにした。この結果から、老化によって嗅覚神経細胞が細胞死することや、それによってショウジョウバエが異常な行動をすることが分かった。
一般に、老化に伴って嗅覚機能は低下する。また、パーキンソン病を含む神経変性疾患でも運動機能障害に先だって嗅覚機能低下が現れる。今回の研究成果は、正常な老化の過程で神経細胞が細胞死することの意義や分子機構に迫るとともに、神経変性疾患で神経細胞が細胞死する原因と発症機序の理解に繫がることが期待される。
◆ 参照関連記事
<カスパーゼ(Caspase)とは、細胞にアポトーシスを起こさせるシグナル伝達経路を構成する、一群のシステインプロテアーゼである。......カスパーゼは他のカスパーゼを切断し活性化するというカスケード(連鎖的増幅反応)の形で機能する。またある種のカスパーゼはサイトカイン(インターロイキン-1β)の活性化を通して免疫系の調節にも関与している。アポトーシスは正常な発生のほか、がんやアルツハイマー病などの疾病にも関係があることから、1990年代半ばに見出されて以来、治療のターゲットにもなりうるものとして注目されている。/ アポトーシスとカスパーゼ 多細胞動物の細胞は、発生の過程で、あるいはX線や抗がん剤などDNAを損傷するストレス刺激や、細胞へのウイルス感染やがん化させる刺激など、さまざまな刺激に対する生体防御機構の一つとして、自らアポトーシスを起こして自殺する機構を持っている......> ( ウィキペディア - カスパーゼ )
上記記事での研究成果は、<正常な老化の過程で神経細胞が細胞死することの意義や分子機構に迫るとともに、神経変性疾患で神経細胞が細胞死する原因と発症機序の理解に繫がることが期待される> と控え目(?)に述べられている。
しかし、冒頭で述べたとおり、"細胞死" のメカニズム解明は、"がん" や "アルツハイマー病" など、現代が直面している重大な医学的課題にヒントを与えるのかも知れず、大いに期待されてよいと思われる...... (2014.07.01)
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