がん患者の、昨今の "悩み" として特徴的な点は、"抗がん剤の副作用など「身体の苦痛」が増えたこと" なのだそうである。"再発の不安を中心とした「心の苦悩」" の割合をも上回るのだという。
◆ 参照 当誌過去の "抗がん剤の副作用" 関連記事
○ <がんの患者と体験者に悩みを尋ねたアンケートで、10年前に比べて再発の不安を中心とした「心の苦悩」の占める割合が減った一方、抗がん剤の副作用など「身体の苦痛」が増えたことが8日、山口建静岡県立静岡がんセンター総長らの研究チームの調査で分かった。......> ( がん患者の苦悩10年前より減少、ただし"抗がん剤の副作用"など「身体の苦痛」は増加!/当誌 2015.09.10 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 抗がん剤の副作用(1)「見えない副作用」違いを知って/朝日新聞 - apital/2015.12.16 - 07:00 は、 <抗がん剤の副作用に関する悩みが目立って増えている> という "調査結果" を踏まえて、<抗がん剤の副作用とどう向き合ったらいいか> について、その実情と背景の解説を含めて丁寧に説明している。
<抗がん剤の副作用は、個別の事情によっていろいろな違いがあります。 ...... 【スライド:抗がん剤の副作用の特徴は?】 薬によって、副作用が出やすいものもあれば、出にくいものもあります。人によって出ない場合もあるし、強く出る場合もあります。ですから、個人差に応じて、タイミングをうまくはかりながら、副作用をコントロールしていくことが何よりも大切になります。 【スライド:抗がん剤治療には支持療法が大切】 副作用のまったくない抗がん剤というものはなかなかありません。抗がん剤には、プラスの面としてがんへの治療効果が期待できる半面、マイナス面として副作用の問題があります。この効果と副作用のバランスをいかにとるかが大事です。副作用をうまくコントロールすることは、治療効果を高めるためにも重要です。 ●患者が気になる「見える副作用」 抗がん剤の副作用を考えるのにあたり、患者さんにぜひ知っていただきたいことがあります。副作用は患者さんが自分で気づきやすい「目に見える副作用」と、自分ではなかなか気づきにくい「目に見えない副作用」と、大きく二つに分かれるのです。 目に見える副作用の代表例は脱毛、食欲不振、口内炎、下痢などです。これらは患者さんにとっては非常につらい一方で、すぐに生命に関わるようなことは比較的少ないのが特徴です。 一方、目に見えない副作用としては、骨髄抑制、肝臓や腎臓など臓器の障害などが代表的です。こうした副作用は、すでに起こっていたとしても初期のうちは患者さん自身で気づくことはなかなか難しいです。ただ、重症化すれば命にかかわる可能性が出てきます。 【スライド:目に見えない副作用】 抗がん剤による治療中は、患者さんは必ず、定期的な採血を受けていると思います。なぜそれをしているかというと、このような見えない副作用をしっかりチェックして、異常がないかを確認し、重症化を防ぐことが目的です。 ●増えた「末梢神経障害」への悩み 【スライド:がん患者の悩みと負担】 がんの患者さんたちが一体どんなことに困っているのか、静岡がんセンターなどの研究グループが2013年に実施した調査があります。これは、10年前の2003年に行ったのとほぼ同一内容のアンケートです。寄せられた4054人の声を分析したところ、「症状・副作用・後遺症」に関する悩みが22.8%と、10年前から7.7ポイント増えていました。中でも抗がん剤を中心とした「薬物療法に関する悩み」が顕著に増えていたのです。 【スライド:薬物療法関連の悩みや負担の増加】 具体的な悩みとして増えていたのは、「末梢(まっしょう)神経障害」といわれる手や足先のしびれなどです。あと、やはり抗がん剤にはどうしても、髪の毛が抜けやすいものがありますので、脱毛が苦痛だといった結果がアンケートでは出てきています。 【スライド:第二次調査結果の要旨】 こうした悩みはなぜ増えてきているのでしょうか。 一つは最近、抗がん剤を使う患者さんが増えてきているというのが理由だと思われます。その背景として、新しい抗がん剤、治療効果が期待できる新薬がいろいろと登場しています。抗がん剤のパワーも10年前、15年前と比べると圧倒的に上がっていて、これによる治療を受ける患者さんが増えてきた。 また、効果が高くなったことに伴って、抗がん剤を受ける期間も長くなってきました。それによって、これまでは見られなかったような、長期間の使用によって起こる副作用が出現しやすくなった。そんなことが、抗がん剤による悩みが増えている原因ではないかと思います。 【スライド資料はいずれも安井さん提供】> とある。
抗がん剤の副作用(1) 「見えない副作用」違いを知って/朝日新聞 - apital/2015.12.16 - 07:00
治療のゆくえ、医療費をはじめお金のこと――。がんの患者はさまざまな悩みを抱えています。そんな中で、患者の悩みが最近とりわけ増えているのはどんなことについてでしょうか。静岡県立静岡がんセンターなどの研究グループが調査したところ、抗がん剤の副作用に関する悩みが目立って増えていることがわかりました。同センター副院長で、抗がん剤の副作用対策に力を入れている安井博史・消化器内科部長に、抗がん剤の副作用とどう向き合ったらいいか、聞きました。(聞き手=田村建二・アピタル編集長)
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抗がん剤の副作用は、個別の事情によっていろいろな違いがあります。まず、胃がんに対しては胃がん用の薬、大腸がんに対しては大腸がんに対しての薬というふうに、がんの種類によって使う抗がん剤が違います。また、同じ抗がん剤を使うとしても、その薬を単独で使うのか、ほかの薬と組み合わせるのかによっても違ってきます。
【スライド:抗がん剤の副作用の特徴は?】
薬によって、副作用が出やすいものもあれば、出にくいものもあります。ただ、その出やすさや、いつ出現するかは、個人によってかなりの差があります。人によって出ない場合もあるし、強く出る場合もあります。ですから、個人差に応じて、タイミングをうまくはかりながら、副作用をコントロールしていくことが何よりも大切になります。
【スライド:抗がん剤治療には支持療法が大切】
副作用のまったくない抗がん剤というものはなかなかありません。抗がん剤には、プラスの面としてがんへの治療効果が期待できる半面、マイナス面として副作用の問題があります。この効果と副作用のバランスをいかにとるかが大事です。
副作用が軽ければ、抗がん剤を順調に、スケジュール通りにこなすことができるようになります。それによって、薬の力が最大限に発揮される可能性が高まります。副作用をうまくコントロールすることは、治療効果を高めるためにも重要です。
●患者が気になる「見える副作用」
抗がん剤の副作用を考えるのにあたり、患者さんにぜひ知っていただきたいことがあります。副作用は患者さんが自分で気づきやすい「目に見える副作用」と、自分ではなかなか気づきにくい「目に見えない副作用」と、大きく二つに分かれるのです。
目に見える副作用の代表例は脱毛、食欲不振、口内炎、下痢などです。これらは患者さんにとっては非常につらい一方で、すぐに生命に関わるようなことは比較的少ないのが特徴です。
【スライド:目に見える副作用】
一方、目に見えない副作用としては、骨髄抑制、肝臓や腎臓など臓器の障害などが代表的です。こうした副作用は、すでに起こっていたとしても初期のうちは患者さん自身で気づくことはなかなか難しいです。ただ、重症化すれば命にかかわる可能性が出てきます。
【スライド:目に見えない副作用】
抗がん剤による治療中は、患者さんは必ず、定期的な採血を受けていると思います。なぜそれをしているかというと、このような見えない副作用をしっかりチェックして、異常がないかを確認し、重症化を防ぐことが目的です。
●増えた「末梢神経障害」への悩み
【スライド:がん患者の悩みと負担】
がんの患者さんたちが一体どんなことに困っているのか、静岡がんセンターなどの研究グループが2013年に実施した調査があります。これは、10年前の2003年に行ったのとほぼ同一内容のアンケートです。寄せられた4054人の声を分析したところ、「症状・副作用・後遺症」に関する悩みが22.8%と、10年前から7.7ポイント増えていました。中でも抗がん剤を中心とした「薬物療法に関する悩み」が顕著に増えていたのです。
【スライド:薬物療法関連の悩みや負担の増加】
具体的な悩みとして増えていたのは、「末梢(まっしょう)神経障害」といわれる手や足先のしびれなどです。あと、やはり抗がん剤にはどうしても、髪の毛が抜けやすいものがありますので、脱毛が苦痛だといった結果がアンケートでは出てきています。
【スライド:第二次調査結果の要旨】
こうした悩みはなぜ増えてきているのでしょうか。
一つは最近、抗がん剤を使う患者さんが増えてきているというのが理由だと思われます。その背景として、新しい抗がん剤、治療効果が期待できる新薬がいろいろと登場しています。抗がん剤のパワーも10年前、15年前と比べると圧倒的に上がっていて、これによる治療を受ける患者さんが増えてきた。
また、効果が高くなったことに伴って、抗がん剤を受ける期間も長くなってきました。それによって、これまでは見られなかったような、長期間の使用によって起こる副作用が出現しやすくなった
。そんなことが、抗がん剤による悩みが増えている原因ではないかと思います。【スライド資料はいずれも安井さん提供】
<抗がん剤を中心とした「薬物療法に関する悩み」の顕著な増加> の足元には、<新しい抗がん剤、治療効果が期待できる新薬がいろいろと登場> → <最近、抗がん剤を使う患者さんが増えてきている> → <効果が高くなったことに伴って、抗がん剤を受ける期間も長くなってきました> → <長期間の使用によって起こる副作用が出現しやすくなった> という "流れ" こそが潜んでいるのだという。
この問題は、どうも、"抗がん剤の効果" という視点と、"がんの根治治療" という視点との乖離を照らしているように見える...... (2015.12.17)
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