ウイルスは、"がんのウイルス療法" として "がん治療" に応用されている。 ウイルスは、体内の免疫反応を喚起させつつ、遺伝子操作を使えば無害とすることもできるため、"がん細胞" だけを攻撃する "がん治療" に活用するメリットがある、というわけだ。
◆ 参照 当誌過去の "がんのウイルス療法" 関連記事
○ <東京大医科学研究所病院は、悪性脳腫瘍の一種である「膠芽腫(こうがしゅ)」の患者を対象に、がん細胞だけに感染するウイルスを使った国内初の医師主導治験を始めると発表した。 このウイルスは、同大の藤堂具紀(ともき)教授らが開発したもので、口の周囲の疱疹(ほうしん)の原因になるヘルペスウイルスの遺伝子を組み換え、正常な細胞には無害で、がん細胞だけに感染するようにした。ウイルスが周囲のがん細胞に感染して、次々とがん細胞を破壊すると期待されている。......> ( がん細胞だけに感染するウイルス使い脳のがんへの"ウイルス療法"!東大医科研治験開始!/当誌 2014.12.24 )
今回注目する下記引用サイト記事 : がん治療、ウイルス+αで 免疫薬併用で効果向上/日本経済新聞/2017.09.25 - 0:41 は、 <がんのウイルス療法にがん治療薬などを組み合わせ、治療効果を高める研究開発が進んでいる。東京大学はヘルペス、岡山大学は風邪のウイルスとがん免疫薬を併用し、それぞれ動物実験で効果を確かめた。ウイルス療法は実用化に向け国内外で臨床試験(治験)が進む。併用による効果向上が治療期間の短縮や薬の使用量抑制などにつながる可能性がある> と報じている。
<......東大医科学研究所の藤堂具紀教授らは口元などに水疱(すいほう)を作る「ヘルペスウイルス」の3つの遺伝子を働かないように改変し、がん治療用ウイルス「G47デルタ」を開発した。このウイルスと、がんに対する免疫の攻撃力を高めるがん免疫薬を併用した際の効果を調べた。小野薬品工業の「オプジーボ」の成分と同じ「抗PD―1抗体」を使った。 肺がんの一種を発症させたマウスにウイルスと抗PD―1抗体を併用すると、約40日生き続けた。何もしないときの生存期間約20日や、ウイルスや抗体をそれぞれ単独で投与した場合の約30日に比べ、延命効果が高まった。 遺伝子改変したヘルペスウイルスには、患者自身の免疫を活性化する作用が備わっているという。藤堂教授は「がん免疫薬ががんによる免疫のブレーキを解除し、ウイルスが免疫が攻撃する矛先を示すことで効果が高まった」と推測する。 岡山大の藤原俊義教授らは風邪の原因になる「アデノウイルス」の遺伝子を操作した「テロメライシン」と呼ぶウイルスを利用した。このウイルスは、がん細胞で酵素「テロメラーゼ」が活発に働く環境で増殖し、正常な細胞では増えない。 実験で大腸がんのマウスにウイルスと抗PD―1抗体の両方を投与すると、腫瘍の成長が抑えられた。12匹のマウスのうち4匹は腫瘍が消えた。 千葉県がんセンター研究所の田川雅敏部長らは改変したアデノウイルスと、がん抑制遺伝子の働きを助ける薬剤「MDM2阻害剤」を併用した。対象としたのは、石綿(アスベスト)を吸い込むなどして発症するがんの一種、悪性中皮腫だ。 細胞の実験では、がん細胞にウイルスだけを投与する場合に比べ、併用では約4倍の細胞が死滅した。アデノウイルスを感染させた中皮腫の細胞では、がん抑制遺伝子「p53」が活発になり、細胞死を起こすという。 田川部長は「薬剤がp53の働きを助けることで相乗効果が出る」とみる。効果や安全性の検討を重ね、3~4年後に臨床研究を始めたい考えだ。 研究成果は28日から横浜市で始まる日本癌(がん)学会で発表する> とある。
がん治療、ウイルス+αで 免疫薬併用で効果向上/日本経済新聞/2017.09.25 - 0:41
がんのウイルス療法にがん治療薬などを組み合わせ、治療効果を高める研究開発が進んでいる。東京大学はヘルペス、岡山大学は風邪のウイルスとがん免疫薬を併用し、それぞれ動物実験で効果を確かめた。ウイルス療法は実用化に向け国内外で臨床試験(治験)が進む。併用による効果向上が治療期間の短縮や薬の使用量抑制などにつながる可能性がある。
東大医科学研究所の藤堂具紀教授らは口元などに水疱(すいほう)を作る「ヘルペスウイルス」の3つの遺伝子を働かないように改変し、がん治療用ウイルス「G47デルタ」を開発した。このウイルスと、がんに対する免疫の攻撃力を高めるがん免疫薬を併用した際の効果を調べた。小野薬品工業の「オプジーボ」の成分と同じ「抗PD―1抗体」を使った。
肺がんの一種を発症させたマウスにウイルスと抗PD―1抗体を併用すると、約40日生き続けた。何もしないときの生存期間約20日や、ウイルスや抗体をそれぞれ単独で投与した場合の約30日に比べ、延命効果が高まった。
遺伝子改変したヘルペスウイルスには、患者自身の免疫を活性化する作用が備わっているという。藤堂教授は「がん免疫薬ががんによる免疫のブレーキを解除し、ウイルスが免疫が攻撃する矛先を示すことで効果が高まった」と推測する。
岡山大の藤原俊義教授らは風邪の原因になる「アデノウイルス」の遺伝子を操作した「テロメライシン」と呼ぶウイルスを利用した。このウイルスは、がん細胞で酵素「テロメラーゼ」が活発に働く環境で増殖し、正常な細胞では増えない。
実験で大腸がんのマウスにウイルスと抗PD―1抗体の両方を投与すると、腫瘍の成長が抑えられた。12匹のマウスのうち4匹は腫瘍が消えた。
千葉県がんセンター研究所の田川雅敏部長らは改変したアデノウイルスと、がん抑制遺伝子の働きを助ける薬剤「MDM2阻害剤」を併用した。対象としたのは、石綿(アスベスト)を吸い込むなどして発症するがんの一種、悪性中皮腫だ。
細胞の実験では、がん細胞にウイルスだけを投与する場合に比べ、併用では約4倍の細胞が死滅した。アデノウイルスを感染させた中皮腫の細胞では、がん抑制遺伝子「p53」が活発になり、細胞死を起こすという。
田川部長は「薬剤がp53の働きを助けることで相乗効果が出る」とみる。効果や安全性の検討を重ね、3~4年後に臨床研究を始めたい考えだ。
研究成果は28日から横浜市で始まる日本癌(がん)学会で発表する。
がんのウイルス療法とがん免疫薬(抗PD-1抗体)などとの併用 は、その "相乗効果" の高さゆえに、最新のがん治療法として種々試みられている。 今後の進展が期待される...... (2017.09.26)
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