やはり "国債" の現状については、これまで以上に意を払って関心を寄せておくべきかと思われる。
"日本の財政赤字" 、"世界でも突出した債務大国日本" は、とにかく巨額の "国債" 発行でどうにか賄われており、一応、その "国債" 保有の "国内" 比率が圧倒的に高いために、 "大丈夫、比較的安全(?!)" と目されているわけだからである。
だが、先日も書いたように(当日誌「狙われた国債/マネー資本主義、ヘッジファンドはCDSや空売りで国債を標的とする 」 (2010.07.05))、今や、世界の "ハゲタカ・ヘッジファンド" によって "国債" が "CDS" や "空売り" の取引の対象と見据えられる環境になってしまったことを考慮するならば、従来以上に日本の "国債" の実態に注目しておくべきだと思うのだ。
そんな中で、以下のような記事に目がとまった。
「中国、日本国債の投資急拡大 5月買越7352億円 欧州の財政危機など背景/日本経済新聞/2010/7/8 10:53」というものである。
< 中国の日本国債への投資が急拡大している。財務省が8日発表した国際収支統計によると、5月単月の中国の日本国債の買越額は7352億円で、過去最高だった2005年の年間買越額の2.9倍にのぼった。欧州の財政危機の高まりを受け、中国当局が膨らむ外貨準備の運用先を日本の短期国債に広げているとみられる。
内訳をみると、期間が1年以内の短期債の買越額が6948億円で、買越額の大半を占めた。期間が5年や10年などの中長期債は404億円の買い越しだった。短期債の買越額は単月では過去最高となる。
中国は09年まで日本国債を売り越していたが、欧州の財政問題によるユーロ安などを受け、今年は1~4月の累計で5410億円を買い越した。5月はさらに投資を拡大し、年初からの5カ月間で買越額は計1兆2762億円と、1兆円を突破した。
中国の国債買いは外貨準備の運用が大半とみられる。人民元相場を維持するため中国人民銀行(中央銀行)はドル買い介入を繰り返し実施している。3月末の外貨準備高は2兆4471億ドルまで膨らんでいる。
7割程度をドル資産で運用しているもようだが、中国は投資先をドル資産以外に多様化する方針を打ち出している。中国外務省は6日の記者会見でも「(運用の)多元化を徐々に進めている」と述べた。
投資の分散先としては、これまで中国の主要な貿易相手でもある欧州のユーロの比重を高くしてきたもようだが、ギリシャ危機をきっかけに欧州経済への不安が台頭してきた。市場ではユーロ安による運用損を避けるため「結果的に、日本に資金を振り向けている」(土山直樹みずほ証券マーケットエコノミスト)との見方が多い。>(中国、日本国債の投資急拡大 5月買越7352億円 欧州の財政危機など背景/日本経済新聞/2010/7/8 10:53)
こうした事実によって決して "国債" 保有の "国内" 比率が揺らぐわけでもなかろうし、一つの事実として受け止めておけばいいのだろうか......。
ちなみに、むしろ最近の動きから言えば、<海外投資家による日本国債の保有額が大きく減っている。>ことの方が問題視されているようである。これもまた、喜ばしい事実とは言えないはずだ。その状況は、以下の記事が伝えている。
< 昨秋からの世界的な金融危機を受け、海外投資家による日本国債の保有額が大きく減っている。ピークだった昨年9月末に比べ、今年6月末時点で約2割、10.9兆円減少。巨額の国債残高を抱え、安定消化に向けて保有者層の多様化を進めてきた財務省には、痛手となっている。
日本銀行が四半期ごとに発表する資金循環統計によると、海外投資家の6月末の国債保有額は41.4兆円で、国債全体(676兆円)に占める割合は6.1%。ピークだった昨年9月末の52.3兆円(保有割合は7.7%)から3期連続で減少した。
【国債の保有者別内訳】(09年6月末)
・銀行など 41.9 %
・生損保 20.0 %
・公的年金・年金基金 15.8 %
・日本銀行 7.8 %
・海外 6.1 %
・家計 5.3 %
・その他 3.1 %
財務省は「金融危機の影響で、海外のファンドが損失穴埋めや投資家への返金などのため、保有資産を売る動きを強めたことなどが要因ではないか」とみる。
もともと日本では、国債の大半を国内の金融機関などが保有している。海外投資家の保有率は、米国やドイツの約5割、英仏の3割台に比べて、著しく低い。
保有者層が偏ると、市場環境が激変した場合に一斉に同じ動きを取る恐れがあり、安定消化に懸念が出かねない。そのため財務省は05年から、欧米や中東、アジアなどで投資家に国債を売り込む説明会を実施。その成果もあり、外国人の保有割合は03年ごろの3%程度から増え続け、昨秋には8%近くに達した。その流れが、金融危機のあおりで逆行したかたちだ。
一方、国内の金融機関などにとっては、国債は低リスクの運用手段として依然、需要が高い。そのため、10年満期の国債の金利は1.3%台と、3%台が中心の欧米先進国に比べて低い。日興シティグループ証券の佐野一彦チーフストラテジストは「現状の低金利では、海外投資家にとって日本国債の魅力は薄い。金融危機が落ち着いても、保有割合を増やし続けるのは難しいのではないか」と話す。(生田大介)>(海外投資家離れ、国債保有2割減 欧米より低金利/asahi.com/2009年9月24日)
事、 "国債" については、何がどうこうと単純な見方では対処し切れず、まさに "複眼的" に監視し、対処されて行くべきなのであろう。
何しろ、今や "一国の命運" がかかっている案件であり、しかも現状のグローバル環境は猛烈なスピードで激変しているからだ。
ひとたび、 "何かの弾みで動いて" しまったら計り知れない影響を及ぼすに違いない "国債" なぞの、その実情に関しては、大袈裟でもなく "核兵器" (?)に対してと同じような監視を怠らないことが必要なのであろう...... (2010.07.10)
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