政府に何を望みますか? という問いに対して、しばしば、われわれは "景気回復"!と答えがちだ。確かに、"失業率" が低下するような景気が望ましいに違いない。
しかし、もうそろそろ、"景気回復" というような "玉虫色" の言葉に寄りすがるのは止めるべきかもしれない。
"株価上昇傾向" に軸足を置いた "景気回復" が、必ずしも庶民の期待する "景気回復" の実現には繋がらず、かけ離れがちだからだ。
端的に言って、この時期の "物価上昇 = インフレ傾向" は、事実上 "実質賃金" の低下、年金生活者にとっては痛打以外ではなく、大半の庶民にとっては "やらずぶったくり" 効果しか伴わない可能性があるからだ。
そうした状況が、 "景気回復" の名のもとで "金融政策" によって作り出されるとしたら、もちろん庶民は、テーブルに運ばれた "景気回復" の皿に向かって、これは "オーダーしたものとは違う!" と言わざるを得なくなろう......。
下記引用サイト記事:QE3は「破滅的」「庶民の敵」... 米連銀がアンケート/日本経済新聞/2012.09.18 は、そうした構図を伝えているのだと思われる。
話の中心には、先ごろの米国の金融政策である "量的金融緩和の第3弾(QE3)"( 参照:株価を押し上げた米国"量的緩和第3弾(QE3)"は"万能薬"か? "隠れた問題点"は?( 当誌 2012.09.17 ) )が見据えられている。
要するに、FRBが米景気の下支えに決意を示して踏み切った "量的金融緩和の第3弾(QE3)" は、米株式市場からは好意的に受け容れられたものの、、一般市民からは酷評が下されているというのである。
<一般市民の期待の乏しさが鮮明/ 「長い目で見て破滅的」との回答が全体の3割/ 過去2回にわたるQEでも米景気の回復が鈍く、市場にあふれる投資マネーが商品市場に流入し物価上昇を招いたとの警戒感が根強い/ FRBの政策が格差を助長する/ 回答の上位10位にはQE3への支持は見当たらず、「バーナンキ議長は辞めるべきだ」との過激な回答が105件と5位に>
世界経済の低迷と債務危機に業を煮やした各国は、こうした "金融緩和" 政策にいよいよ着手し始めており、日本でも "円高対応" と併せてそうした対応への要請がかけられている。( c.f.あすに予定された日銀の金融政策決定会合! )
米国での動向を見る限り、少なくとも "株価上昇傾向" だけを見て安定した "景気回復" の到来、その足音だと "早とちり" することだけは避けたいものだ......。
QE3は「破滅的」「庶民の敵」... 米連銀がアンケート/日本経済新聞/2012.09.18
【NQNニューヨーク=滝口朋史】米連邦準備理事会(FRB)が13日に決めた量的金融緩和の第3弾(QE3)の効果に対し、厳しい評価が相次いでいる。FRB傘下のサンフランシスコ連銀がSNS(交流サイト)フェイスブック上で実施しているアンケートでは、「長い目で見て破滅的」との回答が全体の3割を占めている。米景気の下支えに決意を示したFRBだが、一般市民の期待の乏しさが鮮明になっている。
サンフランシスコ連銀は14日、「QE3は米経済にどのような影響を与えると思いますか」との質問を投稿。米東部時間17日17時(日本時間18日6時)時点で2250件の回答があり、「破滅的」との意見は671件と最多で、「ネガティブ(負の影響)」が189件で続いた。
FRBは13日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、住宅ローン担保証券(MBS)を毎月400億ドル購入すると決定。バーナンキ議長は会見で失業率が持続的に低下するまで購入を続ける構えをみせた。米株式市場ではダウ工業株30種平均が約4年9カ月ぶりの高値を更新するなど好意的な反応が目立ったが、一般市民の反応はむしろ逆だった。
過去2回にわたるQEでも米景気の回復が鈍く、市場にあふれる投資マネーが商品市場に流入し物価上昇を招いたとの警戒感が根強い。「(1ガロン)5ドルのガソリンをありがとう」との皮肉や、1920年代にドイツで起きたハイパー・インフレを示唆する「ワイマール(共和国)」との回答が上位に並んだ。
17日は「ウォール街を占拠せよ」の呼びかけで格差社会に抗議するデモ隊がウォール街近くの公園を占拠してからちょうど1年になる。FRBの政策が格差を助長するとの回答もあった。「貧困層や高齢者、中流階級を締め上げる」が103件と6位に顔を出し、物価上昇で実質賃金が下がるとの懸念も57件あった。
回答の上位10位にはQE3への支持は見当たらず、「バーナンキ議長は辞めるべきだ」との過激な回答が105件と5位に入った。「ポジティブ(プラスの影響)」との回答は25件で17位にとどまった。
厳しい回答が目立つのは、QEで市場にあふれた資金が株式や商品などの金融資産の価格を押し上げ、高額消費を誘発する「資産効果」を実感できる消費者が限られることの裏返しとも言えそうだ。
"景気" が良くなれば "回り回って" 庶民の生活も向上する......、と長い間 "盲信" されてきた。それは、日本経済史の限定された一時期のことであって、そんな状況はとっくに "反転" している。
だからこそ "格差社会" という言葉が定着してきたわけであり、そんな状況下では、"社会全体" を連想させるかの感ある "景気" という言葉には冷静な吟味が必要となる ...... (2012.09.19)
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