一時は大きな期待感に包まれた "がん粒子線治療" である。 しかし、その評価をめぐって新たな動きが浮上している......。
◆ 参照 当誌過去の "粒子線" 関連記事
(1) <重粒子線や陽子線を患部に照射し、がんを治療する粒子線治療について、日本放射線腫瘍学会が「前立腺がんなど一部では、既存の治療法との比較で優位性を示すデータを集められなかった」とする報告書を厚生労働省に提出した。粒子線治療はがん細胞を狙い撃ちできる治療法として普及し、診療報酬上も自己負担となる照射費用以外は保険適用される優遇を受けている。同省は優位性を示せない部位について、有効性や副作用の有無を調べる臨床試験を求める「格下げ」や、がんの進行度に応じて先進医療からの削除も検討する。......> ( 粒子線治療:先進医療除外も!前立腺がんや一部の肝臓がんなど、学会、優位性示せず!/当誌 2015.08.09 )
(2) がん細胞だけを"ピンポイント"で狙う"体幹部定位放射線治療"の成果!病巣を三次元で!/当誌 2015.06.24
今回注目する下記引用サイト記事 : 有効性に疑問符の「がん粒子線治療」 医療ツーリズム5500億の行方/dot./2015.09.21 - 07:00 は、 <安倍政権の成長戦略の目玉として掲げられた「最先端医療技術」。そのひとつであるがん粒子線治療の有効性に疑問符が付けられた。がん粒子線治療とは陽子線と、重粒子線(炭素イオン線)をがん細胞に照射する治療だが、さらに問題も起きている。 重粒子線(のエネルギーの強さ)は2~3倍高い。がん細胞を攻撃する殺細胞効果が非常に強いが、同時に正常組織に与えるダメージも大きくなる。このため、重粒子線治療は従来のX線治療では起こり得ない重篤な後遺症を招いている。 早くも看板倒れとなってしまうのか。> と報じている。
< 安倍政権の成長戦略の目玉として掲げられた「最先端医療技術」。そのひとつであるがん粒子線治療の有効性に疑問符が付けられた。がん粒子線治療とは陽子線と、重粒子線(炭素イオン線)をがん細胞に照射する治療だが、さらに問題も起きている。早くも看板倒れとなってしまうのか。 同じ粒子線でも、陽子線と重粒子線とではエネルギーの強さに大きな差がある。RBE(生物学的効果比)という指標で示すが、X線の1に対して、陽子線は1.1とほぼ同じだ。だが、重粒子線は2~3倍高い。がん細胞を攻撃する殺細胞効果が非常に強いが、同時に正常組織に与えるダメージも大きくなる。このため、重粒子線治療は従来のX線治療では起こり得ない重篤な後遺症を招いているという。 「難治性がんでも、腺様嚢胞(せんようのうほう)がんという長生きするがんがあります。唾液腺とか口腔内によく起きる疾患ですが、このがんにかかって重粒子線治療を受けた患者さんを診れば、その後遺症の重さがよくわかります。口を開閉させる筋肉や組織がダメージを受け、口がほとんど開けられなくなった人がいます。こうした重大な障害はブラックボックス化しながら、たまたま良好な経過をたどったケースリポートだけ取り出して、科学的なデータであるかのように言い募ってきた。その綻びが公になったわけで、もはや壊滅状態でしょう」(元慶応義塾大学医学部講師で、現在はセカンドオピニオン外来を開設する近藤誠氏) 既存のX線治療なども進歩して効果が変わらないのなら、わざわざ高額の粒子線治療を選ぶ患者は少なくなるのではないか。 特に重粒子線施設は海外でもドイツ、イタリア、中国の3カ所しかない。放医研は世界初の、冠たる治療施設である。今回、取材を申し込んだが、次のようなメールが返ってきた。 「誠に恐縮ですが、現在先進医療会議において審議中の案件であり、審査対象となっている現状では取材にお応えすることは差し控えさせて頂きたいと存じます」 日本の粒子線治療は、海外から患者を呼び込む「医療ツーリズム」の牽引役になると目算されてきた。 安倍政権は成長戦略に健康・医療を重点分野として掲げ、医療の国際展開を推進していくのだという。日本政策投資銀行の試算では、20年には日本への医療ツーリストが42万人、市場規模およそ5500億円を見込んでいる。 「がん粒子線治療は日本特有の技術で、海外からの注目度は高い」(産業調査部) 要は"爆買い"中国人富裕層のインバウンド消費を医療分野でも当て込んでいるわけだ。 だが、政府の皮算用もろとも、もはや"自壊"を免れないのではないか。 ※ 週刊朝日 2015年9月25日号より抜粋 > とある。
有効性に疑問符の「がん粒子線治療」 医療ツーリズム5500億の行方/dot./2015.09.21 - 07:00
安倍政権の成長戦略の目玉として掲げられた「最先端医療技術」。そのひとつであるがん粒子線治療の有効性に疑問符が付けられた。がん粒子線治療とは陽子線と、重粒子線(炭素イオン線)をがん細胞に照射する治療だが、さらに問題も起きている。早くも看板倒れとなってしまうのか。
同じ粒子線でも、陽子線と重粒子線とではエネルギーの強さに大きな差がある。RBE(生物学的効果比)という指標で示すが、X線の1に対して、陽子線は1.1とほぼ同じだ。だが、重粒子線は2~3倍高い。がん細胞を攻撃する殺細胞効果が非常に強いが、同時に正常組織に与えるダメージも大きくなる。このため、重粒子線治療は従来のX線治療では起こり得ない重篤な後遺症を招いているという。
「難治性がんでも、腺様嚢胞(せんようのうほう)がんという長生きするがんがあります。唾液腺とか口腔内によく起きる疾患ですが、このがんにかかって重粒子線治療を受けた患者さんを診れば、その後遺症の重さがよくわかります。口を開閉させる筋肉や組織がダメージを受け、口がほとんど開けられなくなった人がいます。こうした重大な障害はブラックボックス化しながら、たまたま良好な経過をたどったケースリポートだけ取り出して、科学的なデータであるかのように言い募ってきた。その綻びが公になったわけで、もはや壊滅状態でしょう」(元慶応義塾大学医学部講師で、現在はセカンドオピニオン外来を開設する近藤誠氏)
既存のX線治療なども進歩して効果が変わらないのなら、わざわざ高額の粒子線治療を選ぶ患者は少なくなるのではないか。
特に重粒子線施設は海外でもドイツ、イタリア、中国の3カ所しかない。放医研は世界初の、冠たる治療施設である。今回、取材を申し込んだが、次のようなメールが返ってきた。
「誠に恐縮ですが、現在先進医療会議において審議中の案件であり、審査対象となっている現状では取材にお応えすることは差し控えさせて頂きたいと存じます」
日本の粒子線治療は、海外から患者を呼び込む「医療ツーリズム」の牽引役になると目算されてきた。
安倍政権は成長戦略に健康・医療を重点分野として掲げ、医療の国際展開を推進していくのだという。日本政策投資銀行の試算では、20年には日本への医療ツーリストが42万人、市場規模およそ5500億円を見込んでいる。
「がん粒子線治療は日本特有の技術で、海外からの注目度は高い」(産業調査部)
要は"爆買い"中国人富裕層のインバウンド消費を医療分野でも当て込んでいるわけだ。
だが、政府の皮算用もろとも、もはや"自壊"を免れないのではないか。
※ 週刊朝日 2015年9月25日号より抜粋
日本の "最先端医療技術" が、真実、高く評価された上での "医療ツーリズム" 構想の、その隆盛であるならば、それはそれで結構なこと。 だが、上記記事にあるがん粒子線治療のような "不透明な材料" が牽引するならば前途多難さが垣間見えてくる...... (2015.09.23)
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