言うまでもなく、その種類を問わず、"がん" が恐れられる最大の理由は、"再発・転移" であろう。
いわゆる "三大療法"(除去手術/抗がん剤/放射線)と呼ばれる "がん治療法" における "最も切実な課題" もまた、この "再発・転移" の "抑制/阻止" だと見なされている。
それだけに、この課題への有効な手立てが構築されたならば、その時こそ "がんの根治!" という言葉にリアリティが付与されるはずではなかろうか。
◆ 参照 ――
< 転移(てんい、metastasis)とは、腫瘍細胞が原発病変とは違う場所に到達し、そこで再び増殖し、同一種類の腫瘍を二次的に生じること。
がんが転移して新しい腫瘍が形成されると、それは二次がんあるいは転移がんと呼ばれ、転移した細胞は原発病変のものと同一種となる。これは、例えば、乳癌が肺に転移した場合、二次がんは悪性の肺細胞ではなく、悪性の乳腺細胞によって形成されることを意味する。この肺の疾患は肺癌ではなく乳癌肺転移になる。但し臨床医学の現場では習慣的に、二次がんが転移した先の器官の名前で「転移性○○がん」と呼ぶ。
特定のがんは特定の臓器に転移するといった傾向もある。例えば、前立腺癌は、通常、骨に転移する。同様に、大腸癌は肝臓に転移する傾向がある。また、女性の場合、胃癌はしばしば卵巣に転移する(Krukenberg播種)。
腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍とに分類されるが、このうち、悪性腫瘍のみが浸潤や転移を行う。見掛け上、良性腫瘍であっても、転移が起こった場合には悪性腫瘍とみなされる。......>( ウィキペディア/転移 (医学) )
このように、"がんにおける最大懸念" と言わざるを得ないだけに "がん再発・転移" とその克服研究については、以下のように当誌でも注意深くフォローし続けてきた。
◆ 参照 当誌過去の "がん再発・転移" 関連記事
(1) "がん細胞転移"の仕組み解析(名大グループ)!タンパク質インテグリンベータ1の関与!/当誌 2014.05.03
(2) "がん転移"の仕組み(フィブロネクチン)解明(京大)!副作用少ない予防/治療法開発へ!/当誌 2014.04.23
(3) "がん転移抑制"する分解酵素「TLL1」を発見!(熊本大の尾池教授ら)新たな治療法期待!/当誌 2014.01.25 )
今回注目する下記引用サイト記事 : 国がん、術後長期間を経て再発・転移する乳がんのメカニズムを解明/マイナビニュース/2014.07.03 は、この "再発・転移" のメカニズムを解明した点、および、これに基づき "新たな治療法の確立ヘの道を拓くことが期待される" とする、そうした画期的な研究成果について報じている。
<国立がん研究センター(国がん)は7月2日、乳がんの特徴である術後長期間を経ての再発、転移について、骨髄中の間葉系幹細胞が分泌する微小な小胞エクソソームが乳がん細胞の休眠状態を誘導していることを明らかにしたと発表/ 同成果は、研究所分子細胞治療研究分野の小野麻紀子研究員、同 落谷孝広 分野長らによるもの。詳細は、米科学誌「Science」の姉妹誌である「Science Signaling」(電子版)に掲載/ 乳がんは、手術をしても、その10年後や20年後でも再発や転移する場合があることが知られている。この仕組みとして、がん細胞の発生の大元であるがん幹細胞がはじめて発生した時に骨髄に移動し、増殖もせず休眠状態になり、長い年月を経て再び目覚めるためと考えらえているが、どのようなメカニズムで休眠状態になり、また目覚めるのかはよく分かっていなかった/ 今回の研究では、骨髄中に存在する間葉系幹細胞が分泌する直径100nmの顆粒(エクソソーム)によって一部の乳がん細胞が幹細胞様の性質を獲得し、休眠状態になることが確認されたほか、間葉系幹細胞由来のエクソソームに含まれるマイクロRNAが、乳がん細胞へ受け渡され、乳がん細胞の遺伝子発現を変化させることで、休眠状態を誘導する要因の1つとなりうることが確認/ また、乳がん患者骨髄中で、乳がん細胞と間葉系幹細胞が隣接して存在することも確認。骨髄中に潜伏するがん細胞では原発巣のがん細胞と比較して、休眠状態を誘導するマイクロRNA量が増加傾向にあることも証明/ 今回の結果を受けて研究グループでは、骨髄中にある、あらゆる血球細胞になることが可能ながら基本的には休眠状態となっている造血幹細胞と同様に乳がん細胞も周囲の細胞からのエクソソームを利用して休眠状態を誘導、維持している可能性が示されたとしており、将来的には、例えば、間葉系幹細胞からのエクソソームの供給経路を断ち切る新規薬剤を開発し、骨髄中で乳がん細胞が休眠状態になることを打破し、抗がん剤耐性を克服するといった、新たな治療法の確立ヘの道を拓くことが期待されるとコメント> とある。
国がん、術後長期間を経て再発・転移する乳がんのメカニズムを解明/マイナビニュース/2014.07.03
国立がん研究センター(国がん)は7月2日、乳がんの特徴である術後長期間を経ての再発、転移について、骨髄中の間葉系幹細胞が分泌する微小な小胞エクソソームが乳がん細胞の休眠状態を誘導していることを明らかにしたと発表した。
同成果は、研究所分子細胞治療研究分野の小野麻紀子研究員、同 落谷孝広 分野長らによるもの。詳細は、米科学誌「Science」の姉妹誌である「Science Signaling」(電子版)に掲載された。
乳がんは、手術をしても、その10年後や20年後でも再発や転移する場合があることが知られている。この仕組みとして、がん細胞の発生の大元であるがん幹細胞がはじめて発生した時に骨髄に移動し、増殖もせず休眠状態になり、長い年月を経て再び目覚めるためと考えらえているが、どのようなメカニズムで休眠状態になり、また目覚めるのかはよく分かっていなかった。
今回の研究では、骨髄中に存在する間葉系幹細胞が分泌する直径100nmの顆粒(エクソソーム)によって一部の乳がん細胞が幹細胞様の性質を獲得し、休眠状態になることが確認されたほか、間葉系幹細胞由来のエクソソームに含まれるマイクロRNAが、乳がん細胞へ受け渡され、乳がん細胞の遺伝子発現を変化させることで、休眠状態を誘導する要因の1つとなりうることが確認されたという。
また、乳がん患者骨髄中で、乳がん細胞と間葉系幹細胞が隣接して存在することも確認。骨髄中に潜伏するがん細胞では原発巣のがん細胞と比較して、休眠状態を誘導するマイクロRNA量が増加傾向にあることも証明したとする。
今回の結果を受けて研究グループでは、骨髄中にある、あらゆる血球細胞になることが可能ながら基本的には休眠状態となっている造血幹細胞と同様に乳がん細胞も周囲の細胞からのエクソソームを利用して休眠状態を誘導、維持している可能性が示されたとしており、将来的には、例えば、間葉系幹細胞からのエクソソームの供給経路を断ち切る新規薬剤を開発し、骨髄中で乳がん細胞が休眠状態になることを打破し、抗がん剤耐性を克服するといった、新たな治療法の確立ヘの道を拓くことが期待されるとコメントしている。
従来の研究によれば、がんの "再発・転移" は "がん幹細胞" が、<はじめて発生した時に> すでに "移動(転移)" しており、それは発見されずに "潜伏(休眠状態)" している......、と。
しかも、ここで問題となっていたのは、そうした状態の "がん幹細胞" の自衛ガードは著しく固く、"抗がん剤" が太刀打ちできる相手ではない! ということのようであった。
その点で、今回の研究成果は、<間葉系幹細胞からのエクソソームの供給経路を断ち切る新規薬剤を開発し、骨髄中で乳がん細胞が休眠状態になることを打破し、抗がん剤耐性を克服するといった、新たな治療法の確立ヘの道を拓くことが期待される> として評価されるのだそうである...... (2014.07.05)
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