"ソーシャルメディア" の "利用実態" が、もっと広い視野と洞察力をもって調査されるべきなのだろうな、とつくづく思う。
人々の注目を独占しているかのような風潮がありながら、今一つ、実際はどのように利用され、どんな点に矛盾や問題点が潜んでいるのかが分からない。
"マーケティング" と "マネタイズ" の視点に基づくアンケート調査結果などを散見するが、とてもそれらが現時点での" ソーシャルメディア" の利用実態を代表するものだとは受けとめにくい。
たとえば、"利用実態" を問題とするならば、当然のことながら、"利用しているユーザー" とともに、"利用していない人々" という "部外者" の動向をも併せて視野に入れて調査分析の対象とされなければ全体像を掴んだことにはならないはずであろう。
"利用していない人々" の中には、"喰わず嫌い" ばかりではなく、何らかの理由をもって "拒絶" している人もいないとは限らないのではなかろうか。現状の "ソーシャルメディア" の水準をもってすれば、"拒絶" されても致し方ない実態に留まっていないとは言い切れないような気もする......。
しかし、そうした "部外者" の存在を視野に入れた調査にお目にかかったことはない。専ら、"内向き" のユーザーたちの主観的思いなどだけが照らされているかのようだ。
もともと "ソーシャルメディア" は "セミ・クローズド" な空間特性を持っていて、それだからこそ果たす特殊な役割もあるはずだろう。決して "閉鎖性" に傾くから悪いというものでもなかろう。もっとも、"蛸壺化" の危険に気づかずに運用されているケースも少なくなさそうではあるが......。
いずれにしても、"ソーシャルメディア" は人と人との "つながり" を担うものだとすれば、"つながり" という言葉を "絆" と言い換えても問題なさそうである。
したがって、"ソーシャルメディア" とは、"閉鎖性" に傾きがちな、人と人との "絆" だと言ってもあながち間違いではないと思われる。
さて今回、下記引用のサイト記事を取り上げた理由は、"ソーシャルメディア" に関する以上のような問題意識があってのことなのである。
今年は、不幸な "大震災" という経緯から、われわれは人と人との "絆" というものを考えさせられた年であったことは疑いないところだ。
ただ、日頃、"ズタズタに切断された人間関係"( "排除型社会"!)のただ中での生活を強いられているわれわれが、いざ、人と人との "絆" へと目を向けた時、そこに浮かび上がってくるのは、身近な "家族" であり "地域" や "仲間" 、要するに "身内!" ということになりがちであろう。それはそれで尊いことではあるに違いない。
だが、"絆" という言葉が掛け声となる状況というのは、"絆" と支援とを "緊急に必要としている人々" が想定されている点が重要であろう。
ところが、<「絆」が必要な人というのは、どうしても流動的で、不利な状況に置かれがち。つまり、人とのつながりがつくれない状況になってしまう。>(下記引用記事)というのが現実であり、事実上 "排除" されているかのごとくではなかろうか。
そして、<そのときに「絆を取り戻しましょう」と言うと、もっとも流動的で不利な人々を「見えない」状態にして、内輪で仲良くできる人たちが地域の担い手として可視化されてしまうわけです。
そうした状態は「絆 格差社会」とも言えるのではないでしょうか。本当に助けが必要な人たちを、シャットアウトしなければ生まれない絆。>(下記引用記事)でいいのだろうか、という疑問も湧いてこよう。
そこで、<そうした状況を変えていこうとすれば「できる限り仲のいい人たちとつながりましょう」ではなくて、「知らない人だけど困っている人がいれば声をかけましょう」でなければいけない。>(下記引用記事)という呼び掛けがなされることになる。
たぶん、こうした呼び掛けは概ね賛同が得られるところではなかろうか。
ところで、ふと振り返ってみると、人と人との "つながり" 方において、<「できる限り仲のいい人たちとつながりましょう」>というのは、"ソーシャルメディア" の基本姿勢ではなかったかと思い当たるのである。
<もっとも流動的で不利な人々を「見えない」状態にして>( "圏外"!)までそうしているかどうか、それは別にしてもである......。
日頃、"ズタズタに切断された人間関係" のただ中での生活を強いられているわれわれが、人と人との "つながり" を切望することは、きっと十分に許されることであろうとは思う。
だが、その選択が、決して<もっとも流動的で不利な人々>を、"つながり" の "圏外"!に追いやっていない、"排除" していないと言い切れるほどに "ソーシャルメディア" は成熟しているのだろうか......。
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