政治経済一般: 2013年5月 アーカイブ

 30日の東京市場は、日経平均株価が、再び大きな下げ幅(前日比 -737.43)となり、1万4000円台を大きく割り込んで "13,589.03 円" となった。
 特別 "材料視" されることがあったわけではなく、前日の "欧米株安" や "円上昇" の流れによるものと見られている。
 だが、下記引用サイト記事:〔株式マーケットアイ〕日経平均は一時700円安、先物売りで下げ幅拡大/REUTERS/2013.05.30 に基づけば、

 <短期筋の売りが下げを加速させている/ 先物主導/ 短期筋は下方向への仕掛けを継続しているようだ> という点に "震源" がある模様だ。

 注目すべき点としては、

 <4―6月期の企業業績が見えてくるまで調整が長引く可能性もある/ 先行した株価にファンダメンタルズがついてくるのを待つ局面/ 基本的には参議院選挙までは様子見商状が続き......> などであり、そこから見えてくるのは、"期待先行型" の "株高" であったがゆえの "下げ" という必然的な揺れ戻しなのかもしれない。

 また、この間の "長期金利の上昇" に端を発した "副作用" も出始めているようだ。
 <住宅ローン金利が引き上げられるとの報道などから、不動産セクターの下落幅が大きい

 いずれにせよ、<投資家は慎重姿勢を崩していない> というのがリアルな現状のようである......。




















 日経平均株価の "乱高下" が、当面の経済情勢への不安を煽っている中、28日の東京市場で、< 前日比 +169.33 > に落ち着いたことは、人々がまずまずホッとして胸を撫で下ろす結果だったのかもしれない。

 ただし、その事実とどう関連しているのかは定かではないが、"株価が落ち着く" 事態とは裏腹に、"日本国債10年物" の "金利" が以下のとおり上昇している。

 <長期金利(%) 0.905 +0.0070 28日 15:41>( 日本経済新聞 )

 そこで、ちょうど昨日、昨今の "長期金利上昇( 赤字国債問題 )" への危惧を主旨とした "報告書( by 財務相の諮問である機関財政制度審議会)" が、下記引用サイト記事:「差し迫った」財政健全化、成果なければ緩和効果「減殺」=報告/REUTERS/2013.05.27 のとおり発表されたことについて目を向けておきたい。

 先ず、次のような<警告> がなされる。

 <政府の財政健全化目標の堅持を訴え、「具体的な成果をあげなければ、財政ファイナンスとの疑念から金利急騰を招き、金融緩和の効果を減殺させることになりかねない」

 そして、<政府・与党内にくすぶる追加財政出動論> に対して、

 <補正予算編成(は)財政審報告の精神に反する> とダメ押しをする。

 現時点で警戒されるべきは、以下の点だと強調する。

 <財政健全化に対する政府の姿勢を市場が疑えば、長期金利が急騰するリスク> が立ち現れること!

 <高齢化の進行による貯蓄率の低下や経常収支黒字の減少、金融取引のグローバル化などの変化を見据えると「日本国内の資金が日本国債の購入に向かうという保証はない」> こと!

「国債が市場から安全資産であると信認されることが国債の安定消化にとって最も重要な条件だ」> ということ!

 したがって、

 <政府は「物価安定、金利安定のアンカーが今や財政規律にあるとの認識に立ち......財政再建実現に向けて「中期財政計画で具体的な数値や工程表を提示し、実現が十分に可能な経済の展望を適切に見通すべきである」> と。

 現状の世相は、"円安/株高" だけに関心が向けられているようなので、おそらくこうした "深慮遠望" の分析、観測が冷静に受け容れられる確率は低いのではないかとも推測される......。

 <「安倍政権の高支持率は株価が支えている」(国内金融機関)との見方>( 下記引用サイト記事:焦点:株安は政権のアキレス腱、実体とのかい離露呈/REUTERS/2013.05.24 )があるだけに、"5.23 株暴落" 以降の "株価の推移" は、不安と期待とを交錯させつつ注目を集めている。

 ちなみに、変動幅が "1000円" を超えて不安定さを示した "5.24" の東京市場の、その後の動きを暗示するものとして以下の記事が挙げられる。

 ◆ 参照 (1) < 24日の米シカゴ市場では日経平均先物6月物(円建て)が大幅に続落し、前の日に比べて495円安の1万4305円で取引を終えた。同日の大阪証券取引所の日中取引の終値を305円下回った。円高・ドル安の進行に加え、日本の株式相場が不安定な動きを続けていることを懸念する投資家の売りが相次いだ。>( 日経平均先物、シカゴで大幅続落/日本経済新聞/2013.05.25

 ◆ 参照 (2) < 乱高下が続く東京株式市場について、市場関係者の間では、今後1カ月で日経平均株価がさらに1千円超下落する可能性を指摘する声が出ている。株価上昇の勢いが完全に止まるという見方はほとんどないが、昨年11月中旬以来、一本調子で上がってきた株式市場は、大きな曲がり角を迎えている
 連日の荒い値動きについて三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「ヘッジファンドが大口の売りを出した」と指摘する。もともと、日本株の大幅上昇を支えていたのは海外投資家。昨秋からの買い越し額は9兆円を超えており、これまでの投資による利益の一部を確定する動きが出ているようだ。藤戸氏は「当面、株価の変動性の高さは続くだろう」とみる。
 日経平均株価は今後1カ月で、1万3000~1万3500円まで下がる可能性が指摘されている。......
>( 東京株、「急上昇時の調整局面」で曲がり角に 今後1カ月にあと1千円超の値下がり予想も/msn 産経ニュース/2013.05.24

 もちろん、今後の "株価の推移" を単純に推定することはできない。
 ただ、この間の "株高" が、何をもって構成されてきたのかを改めて振り返っておくことは不可欠だと思われる。下記引用サイト記事 において、

 <大規模な金融緩和や財政出動などを通じて、まず市場や人々の期待に働きかけ、その後に実体経済を動かすことを狙うアベノミクス/ その手法ゆえに株高などの期待値と実体経済と間にかい離が生まれやすい

と指摘され、その<期待値と実体経済と間のかい離> が、"5.23 株暴落" によって "露呈!" したのだと見なすならば、事態をそう楽観的に眺めることは難しいのではなかろうか。

 <実体経済> の領域に、"見るべき兆候" が立ち上がって来ているのであれば、株価上昇時の<一時的な調整の範囲>と見ることも十分に可能であろう。

 しかし、実体経済のそれらについては "今後の課題だというタイムスケジュール" において "売れ浴びせ!" に遭遇したことになる。
 ということは、"5.23 株暴落" には、<大規模な金融緩和や財政出動などを通じて、まず市場や人々の期待に働きかけ、その後に実体経済を動かすことを狙うアベノミクス> というアプローチそのものへの "マイナス・リアクション" が働いたとも言えそうである......。

 妙な譬えとはなるが、ひとたび「王様は裸だ!」の声が周囲を動かすことになると、一体、どんな流れが水路付けられて行くのか......、というシチュエーションなのではなかろうか......。

 "3.23 株価暴落" については、その原因がさまざまに探られている。
 結局、"何とでも言える" 議論のように思えるので、<「当面、株価を押し上げるイベントがないことから短期筋が売りを仕掛けた。......」>( 東証暴落 1100円超下げ ITバブル崩壊時以来過去最大!短期筋の売り仕掛け&投げ売り( 当誌 2013.05.24 )! )と、読み込んでおいた。

 しかし、もう一歩踏み込んで振り返るならば、もし、アベノミクスがホントに "画期的" な経済戦略であるならば、あるいは "そう信じられている" ならば、海外投資筋があのような "売り浴びせ方" をするものであろうか......。
 どうも、あの"売り浴びせ方" から察するに、"東京市場""弄られているだけ!" のような印象が禁じえない、そんな "一幕" のように思えた......。
 株式市場とはそんなものだと言ってみることも十分に可能だ。とすれば、"株高" 傾向を "景気回復" の証しだなんぞと見る "短絡" を慎むべきだろう。

 まあ、いずれにしても、アベノミクスという "官製神話" が、取りあえず "舞台裏" の一部を見せてしまったことだけは確かだ。
 そんな状況と呼応するかに思えるのが、アベノミクスの "別称" として "「クロダノミクス」" と揶揄する "派生語" があるという話題だ。

 <日銀の黒田東彦総裁が進める「異次元の金融緩和策」の総称> として使われるもので、<「黒田のみクス」/3本矢と言いながら、目立つのは市場を揺るがした黒田総裁の大規模な金融政策ばかりで、「人任せの政策パッケージ」との意味/ 「黒田頼みクス」

 要するに、アベノミクスとは、<市場を揺るがした黒田総裁の大規模な金融政策ばかり> の "「クロダノミクス」" ではないのかと言う見方だ。
 とすれば、ここは、日本株を "その水準で弄って儲けるべし!" と海外投資筋(ヘッジファンド)が動いたとしても当然のことのように見えるわけだ。

 もし、<成長戦略が「骨抜きの方針」とならなければいいが> という現状の懸念が引き摺られ続けるならば、"東京市場" には、"定期的" な "3.23 株価暴落" が繰り返されて行くのではなかろうか......。

 ◆ 参照 <アベノミクス第3の矢とするには踏み込み不足が目立つ内容といえる/ 踏み込み不足が目立つのが税制や規制の分野。民間議員から高い法人実効税率の引き下げ要求が相次いだが、財務省は消極的でゼロ回答/ 一段と踏み込んだ改革を示せなければ、株高を支えてきた国内外の投資家の期待が一変する可能性がある>( "成長戦略(第3の矢)"構想の詰めの甘さが、"円安/株高=国内外の期待"の反落を招く!( 当誌 2013.05.17 )

 最近の急ピッチな上昇で過熱感が高まっていた日経平均が、堰を切ったように暴落。下げ幅 1143円 で、<下げ幅は08年10月のリーマン・ショック時も上回り、00年4月17日のITバブル崩壊以来の大きさ>( 東証暴落、1100円超下げ ITバブル崩壊時以来、過去最大/【共同通信】/2013.05.23-15:44 )。

 その原因としては、以下の諸点が指摘されている。

 (1) <利益確定の売りによる下げという色合いが濃い>(下記【 引用記事 1 】)

 (2) <英系金融大手のHSBCが発表した中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)が好不況の節目である50を割り込み、アジア株が急落。円相場が1ドル=102円台に下げ渋ったこともあり......>(下記【 引用記事 1 】)

 (3) <「当面、株価を押し上げるイベントがないことから短期筋が売りを仕掛けた。......」>( 日経平均は900円超す下げ幅、東証1部の出来高が過去最高を更新/REUTERS/2013.05.23

 下記引用サイト記事【 引用記事 2 】:5月中国製造業PMI速報値は7カ月ぶり50割れ=HSBC/REUTERS/2013.05.23-13:26 が示すように、確かに "中国の景気減速" は小さくない "不安材料" であろう。
 しかし、その点だけが "過去最大の暴落" の原因だと見なすにはムリがありそうだ。

 むしろ、<短期筋が売りを仕掛けた> という点こそが説得力を持つ。

 この、"株高" 傾向で、"個人投資家" の "買い" が顕著になっているとの報道を目にしていたので、"そろそろ、来るか!?" と胸騒ぎがしていた矢先であった......。
 "仕掛ける側" にとっては、"原因と思しきキッカケ" は、何でもよいはず。"パニック → 投げ売り!" の立ち上がることが狙いだというわけだろう。
 ただ、これで "終わる" はずはなく、これはいわば "序盤戦" であって、"第二波、第三波" が模索されているに違いない......。

 "長期金利急上昇(国債暴落危機?)" という事象を、もはや等閑(なおざり)にはできなくなっているはずだ。

 これまでの "通念/神話"(日本の "国債" は安全!?)を揺さぶり、覆しかねない、そんな "客観情勢" の火蓋が切られているからだ。

 その "情勢" とは、言わずと知れたアベノミクスとともに表面化した "円安/株高" 傾向のことだ。つまり、今、その "副作用" とも言えるかたちで、これまで "神話" 視されてきた日本の "国債" をめぐる環境に転機が訪れている、と警戒せざるを得ない。

 "円安/株高" 傾向は連日の数字更新が持て囃されても、それと相関関係にある "副作用" とも言うべき "長期金利急上昇" については "影" 扱いとしてしか注目されてはいない。とかく、クスリでもその効き目は吹聴されても、"副作用" については "地味" な扱いとされがちであることと同じことだ。

 そうしたこともあるため、この日誌では、以下のような記事をエントリーしながら、あえてバランスを取ることにも配慮したりしている。

 ◆ 参照 金利上昇、金融危機の"誘発点"はどこか?債務残高は利払い費増大で雪だるま式に膨張!(当誌 2013.05.18)

 ◆ 参照 アベノミクスが孕む財政赤字リスク!長期金利が急上昇(国債は暴落)してからでは遅い!(当誌 2013.05.16)

 しかし、さぞかし日銀とてこの問題に関しては "対処がしにくい" のではなかろうか。

 ところでつい先ほど、<日銀の黒田東彦総裁は22日、金融政策決定会合後に記者会見し、最近の長期金利の上昇が「実体経済に大きな影響を及ぼすとはみていない」と述べ、現時点では景気への悪影響は少ないとの見解を示した。日銀は国債市場を安定させるため、国債の買い入れペースや対象を見直し、弾力的に資金供給していく方針を明確にした>( 長期金利上昇「大きな影響ない」 日銀総裁が見解/【共同通信】/2013.05.22-18:15 ) との記事に接したが、それまで "0.880 %" であった "長期金利" は "0.885 %" へと上昇していた......。

 さて、下記引用サイト記事:長期金利:1年ぶり高水準0.880%/毎日jp/2013.05.21 における、喫緊の "長期金利急上昇" 状況について整理をしておきたい。

 <4月以降の長期金利上昇には複数の要因>は、次の3点。

 (1)投資資金の流れの変化:国債を売り、その資金を株式に回している>点。

 (2)メガバンクなど大手銀行が国債保有量を減らす動きを強めている(巨額損失回避のため)>点。

 (3)日銀の国債買い入れ拡大も長期金利上昇に影響/「国債価格や金利がかえって振れやすくなった」>点。ここに、日銀とて "対処がしにくい" という文脈がある。

 では、<長期金利上昇の問題点>とは何か?

 "財政再建" を困難にさせることは言うまでもないが、併せて "景気回復" の阻害、マイナス要因となる、点だ。当面は、より後者の問題点に留意されるべきかもしれない。

 (1)過去に発行した国債の元利払いに充てる国債費を膨らませる。先進国中で最悪の国の財政は一段と圧迫され、財政再建計画を狂わせかねない>。
 赤字国債を大幅に増発できない以上、金利負担が増えた分は政策に使う経費から削らざるを得なくなる点が問題となる。
 ちなみに、<2013年度一般会計予算のうち、国債費は約22.2兆円と歳出の約24%を占める。うち金利の変動の影響を受ける利払い費は約9.9兆円。政府は国債費を算出するために想定した長期金利を1.8%としているが、この水準を大きく上回ると、追加で財源を手当てする必要に迫られる> ということになる。

 (2)銀行の貸出金利アップなどで企業の設備投資や個人消費の圧迫要因となる> 点。
 これは、アベノミクスの "成長戦略" の少なからぬ "足枷(あしかせ)" となり、"景気回復気運" にブレーキを掛けて余りある

 恐らく、この推移では、"株価上昇" の流れはここしばらく継続するのであろう。そして、その動向と "密着" した "副作用" としての "長期金利上昇" もまた......。

 現時点ほど、"事実をもって現実を評価する" ことの重要さはない、と改めて痛感している。
 メディアが、すべての人々の認識をまるで代表しているかのような顔をしつつ、一方的に時の話題を報じがちだからである。また、そうしたメディアの報じることを、"何の疑問も抱かずに" 受け容れてしまう受け手側のダラシナサもある......。そして、両者が相俟って、現実とは乖離した "仮想現実" をでっち上げてしまう、そんなリスクが気になるわけだ。

 "軽口" をたたく政治家を、妙に持ち上げて吹聴してみたり、かと思えば "賞味期限切れ" とばかりに、「水に落ちた犬は打て」の扱いに転じたり......。と、とかくメディアの仕打ちとはそんなものであり、現実の実体を正確に照らしているわけではない

 とりわけ、"円安/株高" がそのまま "景気回復" に違いないとするその "早とちり" はいただけない。もっとも、昨今では "経済学者、アナリスト" までが、目先のビジネス(講演など)のために、"アベノミクス信奉者へと宗旨替え" をして、期待感だけで膨張した "仮想現実" に花を添えているというから呆れる。

 それはともかくとして、"円安/株高" 事象とは乖離したかたちで、"実体経済" を指し示す指標は "停滞気味" だ。
 "設備投資" に関しても、<甘利明経済財政・再生相は記者会見で、景気は「V字回復している」と胸を張った。だが、景気回復の持続に不可欠な企業の設備投資意欲はなお弱い。長期金利の上昇や欧州、中国経済の動向も景気を下振れさせるリスクになりうる。日本経済はなお本格的な回復に向けた途上にある。......>( 景気本格回復なお途上、設備投資の動き鈍く/日本経済新聞/2013.05.21 )というのが現状だ。

 そして、"消費(購買意欲)" 動向についても、"株高" に刺激されているとされる高額品の売れ行きとは裏腹に、以下の記事による "各指標" からは、その "低迷状態" が相変わらず継続している点が否定できない。

 ◆ 参照 やはり、"足元の景況感"に目を向けておきたい!"4月の街角景気、6カ月ぶり低下"!( 当誌 2013.05.11 )

 ◆ 参照 4月のコンビニ売上高2.6%減 11カ月連続前年割れ/日本経済新聞/2013.05.20

 ◆ 参照 4月スーパー売上高、1.9%減 2カ月ぶり前年割れ/日本経済新聞/2013.05.21

 "消費の伸び悩み" という事実は、むしろ "円安" のデメリットとしての "(輸入原料値上がり→)商品値上げ" というリアリティを反映しつつ、もとより "不確かな景気回復ムード" を "仮想現実" だとしてクールに見据えているからなのではなかろうか。
 周囲を見回してみても、庶民は "円安/株高" の恩恵を、何一つとして授かってはいない上に、来年に予定されている "消費税増税" もある。生活防衛としての "節約志向" と縁を切るわけには行かないことにこそリアリティがあると言える......。

 下記引用サイト記事:4月のスーパー売り上げ減少/NHK NEWS WEB/2013.05.21 では、最も日常生活に直結した消費の場である "スーパー" の "売り上げ減少" が報じられている。

 <日本チェーンストア協会のまとめによりますと、全国のスーパーの先月の売り上げは、1兆259億円余りと、前の年の同じ月を1.9%下回り、2か月ぶりにマイナス/ 品目別では、売り上げの6割を占める「食料品」が0.4%減ったほか、「住宅関連の商品」が2.1%の減少、「衣料品」が8.8%の減少/ 日々の生活に欠かせない食料品などで、消費者がより安い価格の商品を求める節約志向が続いているとみられる

 こうした状況を、"アベノミクス信奉者" は "波及のタイムラグ" として "期待感" のロジックへとつなげるわけだが、果たしてそうなのだろうか......。時間経過だけで、"消費(購買意欲)" 動向は改善されて行くのであろうか......

 "円安" 相場とは、要するに "ドル高" のことであり、"103円台まで" 進んで気にならざるを得ないのは、やはり "米国の容認姿勢" であろう。
 確かに、円安100円突破で苛立つ米自動車大手!米政界へのロビー活動強化!TPP交渉への圧力?!( 当誌 2011.05.14 ) という "苛立ち" の動向もあるにはあったが、今のところ、それが米国のスタンスを代表するものとは見なされていないかに窺える。

 そうすると、ますます、"円安、アベノミクス" に対する "米国の容認姿勢"その背後にある思惑が気にならざるを得ない。
 この辺りに目配せをしておかないならば、いつ何時、"円安、アベノミクス" で有頂天となっている現況に "向い風" が吹き込むとも限らないからだ。

 こうした疑問に対して、下記引用サイト記事:円安進行に「沈黙」する米国の冷徹な打算 米州総局編集委員 西村博之/日本経済新聞/2013.05.19 は、適切な情報源を踏まえて、非常にロジカルな解説をしていて好感が持てた。
 全体印象から言えば、まず、「好事魔多し」(よいことにはじゃまが入りやすい。Lights are usually followed by shadows.)という "諺" が引き合いに出されている点に頷かされた......。"浮かれているバヤイじゃないですぞ!" と。

 記事の主旨は、セクション構成とそのタイトルにそのまま表現されていて非常に分かりやすい。

 米国は、"円安" という事態を漫然と容認しているわけではなく、最大の関心である<米自身の利益を害さないか>という視点で<■ 日本を「監視」>。
 その際、<各国通貨と比べた総合的な価値を示す「ドル指数」>を問題としている。

 その視点からすれば、<■ ドルの価値はほぼ横ばい>なのであり、<「ドル円相場の大きな振れとは裏腹に、米国の競争力や経済活動の落ち込みは小さい」>。 むしろ、<円安・ドル高の進行が、こうも米経済に影響しなくなった最大の理由>が、<「メイド・イン・ジャパン」の存在感の低下>にある点こそが問題!

 <■ 米産業、円安ショックの吸収力高まる>という事実を支えるのは、<米国の輸入額全体に占める日本製品の比率>の激変と、<米産業の生産性の向上>があり、もはや、<かつてほど円安は米企業にとって脅威ではなくなった>!

 では、<アベノミクスを米政府がむしろ支持する姿勢>の根底で、<米国はどんな利益を>見出しているのか?

 <一つは、欧州>のリスクという世界経済にとっての最大懸念であり、<日本の政策は、緩和策を渋る欧州などに追加策を促す「触媒」になり得る>と見なされ、 "容認された" とも見える。<■ ECB緩和の触媒>ということだ。

 また、<もう一つの狙いは、より(米国経済の)実利>を反映した、日本経済の<■ TPPへの助走>(TPPへの組み込み!)である。
 米国は、<アベノミクスで最も大事なのは構造改革、とりわけTPPをテコにした市場の開放・改革>だと見据えており、<円安の容認は、そのおまけ、あるいは助走>だとさえ見ているのではないか......。

 こうした解説の構図を踏まえると、いつまで経っても、米国経済戦略という "釈迦の掌" の上で "暴れ回っている孫悟空" というイメージが拭い切れないのであるが......。

 じわじわと顕在化し始めている "長期金利上昇"(国債の下落)については、"いろいろと温度差のある受けとめ方" に留まっているといううのが現状であろうか。

 ある政府高官は、「当然の流れ」であるとか、「(景気回復で)ある程度の金が動き始めれば、国債の金利もそれにつられて上がって来ざるを得ないことは基本として覚悟しておかなくてはならない」(麻生太郎副総理・財務・金融相)と述べているとか。

 しかし、ユーロ危機における "南欧" のさながら "地獄絵" の様相を思い起こすならば、先進国中最大の財政赤字を抱え込むこの日本としては、もっと危機感をもって受けとめておく必要がありそうではないか。
 また今や、国家財政破綻に瀕する金融状況は、ヘッジファンドにとっては絶好の "稼ぎ" の場でもあることは周知の事実だ。"ヘッジファンドが国債の暴落を仕掛ける空売りのタイミングを狙っている" とは、決してドラマの話ではなくリアリティを持ってもいる。
 ◆ 参照 アベノミクスが孕む財政赤字リスク!長期金利が急上昇(国債は暴落)してからでは遅い!( 当誌 2013.05.16 )

 そこで、下記引用サイト記事:コラム:長期金利上昇、金融危機の「誘発点」はどこか=河野龍太郎氏/REUTERS/2013.05.16 によって、

 <では、長期金利がどの程度上昇すれば、金融システムは動揺を始め、危機に陥るのだろうか> について "下調べ" をしておいてもムダにはならない、と思えた。

 先ず、一頃ニュースを賑わしていた "ユーロ危機" における "ギリシャ財政破綻" を、"対岸の火事" として考えないことが大前提かと思う。たとえ、現時点で、目を見張る "株高" があろうとも、事態の急変はこの時代の最大の特徴だ。
 しかも、日本は先進国中最大の財政赤字国でもある。そして、それでも無難にこなすことにつながってきた理由の、その "国債" に "火の粉" が降りかかろうとしているわけだから、"財政破綻" のリスクが無縁であろうはずがない......。

 <アベノミクスは、結局、「マネタイゼーション」の罠に陥る/ 長期金利の上昇を食い止めることが難しくなるという点/ いったん長期金利が上昇を始めれば、利払い費が増大し、債務残高が雪だるま式に膨張/ 負のスパイラルが始まるリスク

 そして、<では、長期金利がどの程度上昇すれば、金融システムは動揺を始め、危機に陥るのだろうか> について、以下のように推し量っている。

 <長期金利が3%を上回ってくると(中小企業金融機関等は)経営問題に直面政府が誤って猶予政策を取り、ゾンビ銀行の延命に財政資金の投入を始めると、 財政リスクプレミアムが上昇し、長期金利は一段と上昇

 <長期金利が4%に近づけば結局、日銀が国債の買い支えに動かざるを得なくなる/ リスクプレミアムが発生し金利が上昇/ さらなる金利上昇圧力

 <長期金利が5%を超えると大手金融機関、系統金融機関でも自己資本不足に陥るところが現れ、金融システムは危機的様相を強める

 <6%まで上昇すると大手金融機関を含め大半の金融機関で自己資本が不足/ 日本政府単独では対応できない。国際通貨基金(IMF)に支援を求めることになる

 <あるいはもう一つ、金融抑圧政策という選択肢もある国債を保有する金融機関、最終的には預金者や保険契約者、年金契約者の犠牲によって、公的債務(正確には対GDP比)を圧縮していく

 多分、こうして鳴らされる "警鐘" が有効なのは、その時が訪れてからではなく今をおいてないはずだ......。

 "1─3月国内総生産(GDP)" は、"資産効果とマインド改善による個人消費" によって、前期比で実質0.9%増(年率換算:3.5%増)の高成長とはなったものの、

持続力ある景気の回復に必要なのは、金融市場の高揚に踊らされた資産効果やマインド効果ではなく、地に足の着いた成長だ。「個人消費が景気を支えている間に、企業部門が持ち直せるかどうかが今後の焦点」/ 今のところ、その先の設備投資に結び付く気配はみられない。1─3月GDP統計では設備投資は引き続きマイナス成長となり、底打ちに至っていない。3月日銀短観でも、大企業製造業の13年度投資計画は過去2年を下回る伸び率にとどまった>( 焦点:高成長のGDP、「消費の宴」終了前に企業部門の回復必要/REUTERS/2013.05.16

という状況だ。そんな中で、いよいよ "企業部門" が主役である "実体経済" を支援する政府による "成長戦略" の動向が注目されている。

 ところが、下記引用サイト記事:成長戦略、「痛み」は先送り 混合診療などに触れず/日本経済新聞/2013.05.15 によれば、<踏み込み不足が目立つ内容> だと言う。

 <アベノミクス第3の矢とするには踏み込み不足が目立つ内容といえる/ 踏み込み不足が目立つのが税制や規制の分野。民間議員から高い法人実効税率の引き下げ要求が相次いだが、財務省は消極的でゼロ回答/ 一段と踏み込んだ改革を示せなければ、株高を支えてきた国内外の投資家の期待が一変する可能性がある> と。

 しかも、<政府の関心は政策の中身から発信方法に移りつつある。麻生太郎副総理は戦略を伝える「四文字熟語」のスローガンが必要と提案。安倍首相も「国民や世界にどうメッセージを発信するか議論してほしい」と指示> とあり、まるで "就職活動" の "面接対策" として "自己アピール" を強調するような雰囲気に落ちついている。とにかく、専ら "参院選" 向けの好印象づけが重要だとする思惑が透けて見えるかのようだ......。

 しかし、本来を言えば、多くのリスク(財政的リスクほか)を取りながら、せっかく "景気回復期待" をここまで集めて "円安/株高" という "前提(ジャンプ台)づくり" に到達したのであるから、これらを最大限に活かした "画期的な成長戦略" としての "第3の矢" を放つのがスジであろう。今、警戒すべきは、"詰めの甘さ" 以外ではなさそうだ......。"党利党略" に走る場合ではないはずだ。

 "長期金利上昇"(国債の下落)の "兆し" が、漸く警戒され始めたようだ。
 ジワジワと "国債" が目減りする中、これを売って "うなぎ登り" の観を呈するがごとき株式投資に投資先を鞍替えをした方が良いと誰もが考えるからだ。

 下記引用サイト記事【 引用記事 1 】:長期金利 1年1か月ぶりの水準に/NHK NEWS WEB/2013.05.15 によれば、

 <15日の東京債券市場は、株価の上昇傾向が続くなかで投資家の間で日本国債を売って株式などに資金を振り向ける動きが強まり、長期金利は一時、0.92%とおよそ1年1か月ぶりの水準まで上昇/ 大量の国債を保有する国内の金融機関が国債の値下がりによる損失を抑えようと、売り注文を一段と増やすのではないか/ 国債が売られやすい状況が続いている> とある。

 この動向に対する政府側の対応としては、下記引用サイト記事【 引用記事 2 】:日銀 金利上昇対応で資金供給/NHK NEWS WEB/2013.05.15 のとおり、

 <日銀は、このところの長期金利の上昇を受けて、国債などを担保に金融機関に資金を貸し出す形で、金融市場に対して2兆円に上る大量の資金を供給する措置> を講じたとある。
 こうした、まるで "トートロジー(同義語反復)" のような対応策/措置が、後日に禍根を残しはしないかと懸念されるが、今、確実に言えることは、"日本国債暴落の兆し" を虎視眈々と待ち受けている "海外ヘッジファンド" への "好材料提供!" ではないかと思われる。

 下記引用サイト記事【 引用記事 3 】:ヘッジファンドが「異次元金融緩和」で浮かれた市場のスキを狙っている[大前研一の「産業突然死」時代の人生論]/nikkei BP net/2013.04.15 は、一ヶ月前の記事であるが、今、この時期に再度注目されて良い。

 <マーケットというのは、調子が良い時は問題ないのだが、逆回転し始めると落ちる時は一気に落ちる可能性がある。資金が殺到して国債の利回りが急落したかと思った後に神経質に戻す時が危ない/ 日本国債暴落シナリオで資金を集めているヘイマンや円安に賭けて1000億円以上を稼いだジョージ・ソロス氏らのヘッジファンドは、そのような瞬間を、国債の暴落を仕掛ける空売りのタイミングとして狙っている/ 彼らは安倍首相の応援団ではない。とりあえず「安倍+黒田の異次元の緩和策」に唱和して儲けただけだ。今度は確実に浮かれた市場のスキをつくことを狙っている

 そして、以下のように警鐘を鳴らしている。
 <国民はアベノミクスのリスクをしっかりと認識しておかなければならない。長期金利が急上昇(国債は暴落)してからでは遅い> と。

 安定した "実体経済成長" の予感イメージを、"短期間で披露" したい( 参院選選挙パフォーマンス? )というのがアベノミクスの真骨頂なのであろうが、そのために "後日に禍根" を残す可能性大であることを視野から外すのは如何なものであろうか......。
 いや、世界一の "財政赤字" 国の "安全弁" と目されてきた "国債" を、"リスクに曝している事実" をしっかりと凝視しなければならない......。

 "円安/株高" の勢いが続いている。
 10日~11日のロンドン郊外での主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議では、円安に対して目立った批判が出なかったということもあり、"円安" の歩調は弱まることがなさそうな気配。

 世界的な "金融緩和" 態勢ゆえの "無風状態" なのであろうか。まして、米国は "金融緩和" に関しては "一二歩先行く" 先行者でもあるだけに、大局的には "黙認" の姿勢ということか。

 ただし、米国の "足元" では、"円安100円突破で苛立つ!" 勢力もあるという。
 本格的な復活途上にあるとされる米ゼネラル・モーターズ(GM)など米自動車大手3社だ。
 ここまでの "円安" 推移に至るプロセスでも、すでに以下のような観測がなされていた。

 <米ゼネラル・モーターズ(GM)など米自動車大手3社が本格的な復活を前に、日本車メーカーと激突する様相を強めている。米国市場では、日本勢が円安を追い風に攻勢を強めているため、日本の環太平洋経済連携協定(TPP)参加に反対し、米国への輸出増を食い止めたい考えだ。米国勢が新車攻勢をかける中国や、ロシアなど「ポスト中国」の新興市場でも、日本勢が立ちはだかっている。......
 米国勢は、米政界へのロビー活動を通じた守備固めにも余念がない。日本のTPP交渉参加に反対しているほか、安倍晋三政権が人為的に円安に誘導しているとも批判。米自動車団体を通じ「日本市場は閉鎖的」と主張している。
 狙いは、円安傾向で輸出採算が改善している日本車に対し、関税という「防波堤」を守ることにある。米国は乗用車で2.5%、トラックで25%の関税を課している。......
>( 米自動車復活に日本勢の壁 円安、北米で競争激化/日本経済新聞/2013.02.21

 こうした文脈の延長線上に、下記引用サイト記事:米自動車大手が円安めぐり議会に対応要求、ドルが100円突破で/REUTERS/2013.05.10 が報じる現在状況があるということになる。

 <「米議員がもう限界だと声を上げる時が来た」/ 「円安を目指した日本の金融政策は、特に米国など貿易相手国を犠牲にして、引き続き日本の景気を押し上げ、輸出を拡大している」/ 円安が進むごとに「米国で輸出の減少と雇用の喪失につながり、TPPに日本を含めるべきでないという議論のさらなる理由になる」> として、

 <米自動車大手3社(ビッグスリー)で構成する米自動車政策会議(AAPC)が議会に対応策を講じるよう求めた> という現状である......。

 "1ドル=110円台" まで......、という声( 政府高官発言 )もあるようだ。

政府高官は10日夜、東京外国為替市場で円相場が一時1ドル=101円台になったことについて「まだ円安ではない」と述べた。円安が進む水準に関して「(2008年8月に110円台になった)リーマン・ショック前くらい」との見通しも示した。......>( 政府高官、101円台「まだ円安ではない」/日本経済新聞/2013.05.10

 ただし、下記引用サイト記事:コラム:今後見込めない「一方的な円安」/REUTERS/2013.05.10 のような "論調" が現れること自体、"警戒色" が漂い始めたと読めそうか......。

 下記コラムでは、<今後の円安進行を阻む要因> として、以下の諸点を挙げている。

 (1) <まず、警戒すべきはアグレッシブな金融緩和/ どの程度円安が進むかは、FRBの次の動きにかかっている。FRBが、雇用低迷とディスインフレを理由に量的緩和を拡大すれば、ドルは下落する可能性がある>( ドルの下落動向! )

 (2) <エネルギーの輸入依存度が高まっている点>( "円安"輸入デメリット! )

 (3) <通貨外交の問題もある>( 日本が通貨戦争を仕掛けたとの批判! )

 (4) <周辺諸国への影響もある>( 投機的な円キャリー取引を招く )

 ただし、この間の "円安" 進行が、日本における "金融量的緩和" 策のみで導かれたわけではなかろう点を踏まえると、実際のところ "為替市場" がどこまで突き進むのかは定かではないのかもしれない。そうした "制御不能" 状態の方がむしろ不気味だと言うべきか......。

 これだけ "円安/株高" が表面化しているのだから、それと比べて "実体経済" がどう改善しているのか? という評価基準がこの際妥当なはずであろう。
 "円安/株高" の勢いだけを見て、再び "期待感" を増幅させてみたところで、"今後の景気動向" が十分に予測できるとは限らないからだ。
 言うまでもなく、気になり続けているのは、"期待感" とそれに基づく "投機筋の仕掛け的動き" なのであり、"実体との乖離" が広がれば広がるほどにリスクが蓄積されざるを得ない......。

 慎ましやかに報じられている下記引用サイト記事【 引用記事 1 】:4月の街角景気、6カ月ぶり低下 天候不順で春物不振日本経済新聞/2013.05.10-19:11 /【 引用記事 2 】:4月の街角景気、天候不順で改善一服 先行き指数は最高更新/日本経済新聞/2013.05.10-15:40 によれば、この<4月の街角景気、6カ月ぶり低下> とある。
 ここに来ての "景況感" の低下は、お座なりにされてよいとは思えない。

 この間の "円安/株高" 推移の過熱ぶりを目の当たりにしていると、そこでの "落ち込み" の "言い訳" を、<天候不順> に求めるのは、一理あるにせよ説得力に欠けるのではなかろうか。
 むしろ、<「円安で輸入品の価格が上がり、財布のひもが固くなっている」> と読むのが順当ではなかろうか。

 そして、<ただ「燃料費の高止まりによるコスト負担が運賃に転嫁できず、今後極端に良くなるとは思えない」(北陸の輸送業)といった円安デメリットを懸念する見方も広がっている> といった側面に十分意を払うことが不可欠かと思われる......。

 "デフレ脱却" を果たし、実体経済の活発化へ向かうには、"物価上昇"(=購買力向上) が現れることが前提となる、とはよく知られた道理であろう。実体経済の活発化によって "賃金の上昇" がもたらされるならば、自ずからそうした前提が形成され、実体経済全体の活発化は好循環に踏み込むのであろう。
 確かに、"金融緩和" によってこの間の異様な現象とも言える "株高" は目について余りある。そして、一部高額商品の好調さも生まれているようだ。
 したがって、これらが "水面の波紋のように拡大" して行くならば、上々だということになる。

 しかし、単なる "時間的なズレ" というには "説得力に欠ける事象" がいろいろなかたちで表面化しているようだ。
 以下の点もその一例であろう。

米市場には潤沢にマネーが供給されているが、それが実体経済の拡大を加速させる方向に行かず、資産取引にシフトする傾向が顕著だ。つまり、せっかくの量的緩和政策が実体経済の活発化にはあまり貢献せず、したがって物価上昇率が低下しつつ、株価は最高値を更新するという現象を生んでいる/ "実体経済拡大" 循環を刺激する "物価上昇" が生じにくくなっている ...... >( "株価上昇"と"実体経済拡大"のギャップが問題視!物価上昇せず?!消費増税延期論まで!( 当誌 2013.05.04 )

 以前にも書いたが、今回、目を向けたいのは、自分も含まれた一般消費者の "節約志向" の現状である。

 ◆ 参照 スーパー/コンビニの売上相変らず減少傾向!根強い"節約志向"が"株価上昇"に応えず!(当誌 2013.03.23)

 とかく、"期待感" が生み出す文脈に乗って、またその流れを助長する意図に身を任せる "メディア" は、"株価上昇" とその効果については吹聴しても、その効果にあずかれない大多数の庶民の実態を "スルー" しているのかもしれない。
 中でも、長い "景気低迷/デフレ" 下で、"生活習性" というかたちにまで結晶化した "節約志向" には、より注意深く目を向ける必要がありそうだ。
 この "節約志向" の視点を度外視して、現在の "消費の実態" について議論するならば、"期待感" の足元もすくわれるような気がする......。

 下記引用サイト記事は、この "節約志向" の現状の一端を、<米外食チェーン>と、日本の<吉野家の牛丼値下げ>の動きに焦点を合わせて探っている。

 【 引用記事 1 】米外食チェーン、節約志向の顧客獲得に向けた競争が激化/REUTERS/2013.05.09

 <マクドナルドやウェンディーズなどの米レストランチェーンは、節約志向の顧客を獲得するため、クーポンや期間限定商品などを利用した販売促進策でしのぎを削っている/ 節約志向の顧客獲得に向けた競争は米国だけではない

 【 引用記事 2 】吉野家、4月の既存店売上高11%増 値下げ効果で/日本経済新聞/2013.05.07

 <吉野家ホールディングス(HD)が7日発表した4月の「吉野家」の既存店売上高は前年同月比11.1%増加した。前年を上回るのは7カ月ぶり。4月18日に牛丼並盛りの価格を380円から280円に値下げした効果で、客数が13.6%増と16カ月ぶりにプラスに転じたことが寄与

 日米を問わず、この "節約志向" は現存しているようであり、"北風と太陽" ではないが、"株高という太陽もどき" がしばし顔を出しても、"将来不安(貧弱な福祉)" という "北風" 予想が消えない限り事態は変わらないようだ......。

 "連日株高" という状況が続いて、"舞い上がる気分" とは裏腹の、さすがに "薄気味悪さ(?)" を感じさせられたりしているのかもしれない。
 こうした相場の "薄気味悪い株高" が、"実体経済" (ファンダメンタルズなど)を反映した結果であるわけではなく、もっぱら "(景気回復への)期待感" で構成されていること、なおかつこれを潤沢な資金を手にしている "投機マネー" がひたすら増幅させている結果であることは、概ね周知の事実であろう。

 ◆ 参照 <2つのことには注意する必要がある。1つは今回の上昇相場を主導している日米の両市場が企業業績などファンダメンタルズ(基礎的諸条件)の改善よりも、投資家の期待感の高まりが支えになって盛り上がっていることだ。......もう1つは、株高が続くのは、投資家がお金を失う不安を感じなくなっているせいでもあることだ。投資家の安心感を「恐怖指数」とも呼ばれるボラティリティー・インデックス(VIX)の200日移動平均線でみると、5月6日現在では15.2と、07年9月13日に記録した15.17以来の低水準になっている。米国株はもちろん、日本株が外国人投資家主導で上昇しているのは、外国人が安心感を背景により大胆になっていると考えることもできる。...... 米国の恐怖指数の200日移動平均線はあと一歩で底値圏の12倍台に到達しそうで、その後は6年前のように株価の急落、恐怖指数の急上昇という展開もありうるから、リスクの所在をよく点検しておくことが不可欠だ。>( 戦後2番目の大相場の強さと危うさ 編集委員 前田昌孝/日本経済新聞/2013.05.08

 "連日株高" といった推移と "実体経済" の現状との "乖離" については、つい先日にもここで注目したところだ。

 ◆ 参照 アベノミクス株高は実体経済に繋がるか?"国内市場縮小/生産海外移転"の構造的変化!( 当誌 2013.05.06 )

 "親の過剰期待を一身に背負った子" が、期待どおりに羽ばたいて行くならば、これ以上に睦まじい話はなかろう。だが、何とも言えないのが現実だとも言われる......。

 下記引用サイト記事:新材料なき連日株高 実態から離れる危うさも/日本経済新聞/2013.05.08 もまた、こうした懸念、老婆心を隠さず、昨今の文脈に潜む "リスク" に注意を喚起している記事である。

 <特に新たな好材料が見当たらない中での一段高について、市場では投機マネーによる先物への仕掛け的な買いとの見方が多い

 <半ば強引に水準を切り上げていく最近の株価は、実態から離れていく危うさもにじむ

 <主要企業の決算発表や業績観測報道は、株価に織り込まれてきた高い期待に届かない例も目立つ

 <今期業績の改善に比べ、株価の上昇ピッチが急速な結果、前日時点で東証1部銘柄の予想PER(株価収益率)は再び20倍台に/ 現時点で20倍に達する日本の株価は果たして正当化されるのかという疑問

 <今後は海外の経済指標の減速などをきっかけに「世界景気に連動しやすい日本株の調整も考えられる

 <「経済を映す鏡」としての株式投資を考えるなら、いったん慎重になるべき局面が既に到来しているのかもしれない

 少なくとも、"実体経済" (ファンダメンタルズなど)を、"舞い上がる気分" で眺めずに、"希望的観測" も抑えて吟味してみることが求められていそうだ......。

 再三、目を向けているところだが、"アベノミクス" の成果だとされる "円安/株高" を、それだけを切り離して称賛するのは、いかにも "近視眼" であろう。
 目を向けるべきは、本命の "ターゲット" である "実体経済の好循環" 以外ではなく、"デフレ脱却"("物価上昇")にしてからがそのための前提づくりのはず。

 すでに先日も目を向けたとおり、"物価上昇" 自体が懸念なしとはしない見通しのようである。

 ◆ 参照 "株価上昇"と"実体経済拡大"のギャップが問題視!物価上昇せず?!消費増税延期論まで!( 当誌 2013.05.04 )

 そして、現状の "実体経済" そのものに視点を移すならば、"期待期待" で埋め尽くされている風潮の中で、必ずしも "メインプレーヤー" たる "企業経営者たちの読み" は決して浮かれてはいないようだ。
 今の日本経済が抱える "実体経済" の "構造的問題"、結論的に言えば、「国内市場の縮小」と「生産の多くを国内から移転させた構造的な変化」という一筋縄では解消できない問題を、"企業経営者たち" は見据えており、だからこそ、"設備投資に慎重!" な姿勢を維持し続けている。
 したがって、"アベノミクス" への称賛は、これらの現状が氷解されるところまで "棚上げすべし" と言いたいのが実感か......。

 下記引用サイト記事:アングル:設備投資に慎重な日本企業、収益改善も実需の手応え乏しく/REUTERS/2013.05.02 では、 "14年3月期" 決算にあたっての "企業経営者たちの読み" がリアルに紹介されている。
 これらは、"期待マインド" 云々という捉え所のない事実よりもはるかに重視されてよい事実ではないかと思われる。

 <人口減で需要拡大が見込めない国内での能力増強は難しく「現状のレベルを維持していくのが精一杯」/ 「需要があるところで生産するのが基本的な考え方」/ 海外シフトの流れは変わらない/ 「円安であっても同業メーカーの生産場所がコストの安い海外であれば、競争するために当社も海外生産比率を上げていく必要がある」/ 「われわれはすでにグローバル企業。円高だから海外に出て、円安になったら戻ってくるということはない」

 要するに、

 <日本市場の縮小> と<すでに生産の多くを国内から移転させた構造的な変化> という "構造的問題" によって、主要業界の生産が、<国内回帰は見込めず> と言うことのようだ。

 これらの "難問" によって、国内での "雇用拡大" や "所得上昇" が困難であり続ける事態は容易に推定されるのではなかろうか......。

 東証上場企業でみると全体の75%、1部上場企業では約80%が "3月期決算" だそうであり、各社、業績発表が進み、その概要が明らかに成りつつある。

 今回の焦点は、言うまでもなく、この間の "円安" 傾向が "決算の数字" にどう反映されるのか、という点に違いない。

 下記引用サイト記事:円安受け20%増益見込む=上場企業の今期決算-時事通信中間集計/時事ドットコム/2013.05.01-18:30 によると、

 <上場企業の2013年3月期の決算発表が1日、中盤を迎えた。時事通信社の集計によると、安倍政権の経済政策「アベノミクス」で進んだ円安が寄与し、14年3月期の連結経常利益予想は前期比20.0%の大幅増となった/ 254社の7割に当たる176社が14年3月期の増益を見込む。けん引役は円安だ> という。

 長らく続いた "赤字" 決算が "黒字" へと脱出できた企業も少なくないようだが、これを弾みとして "国際競争力" を本格的に高めてもらいたいものだ......。

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