現代という情報化時代は、腑に落ちない話題や事件が次から次へと連なり、ひとつひとつに付き合っていたのでは身が持たない、といった感じである。
ガソリン税の "暫定" 税率から端を発した「つなぎ法案」がどうのこうのという問題も腑に落ちなければ、食品偽装で大騒ぎをしている最中に、それどころの話ではない水準の「中国産冷凍ギョーザ」での中毒事件が報じられたりと、 "まともなセンス" からは了解しにくい話題が多すぎるように思える。
今、 "まともなセンス" と書いたが、先ずは、自身の感覚や判断をそう呼ぼうとすることに対して "反感" を覚える人もいるかとは思う。それを承知の上で書いた。
人はそれぞれ自身が "まともなセンス" を持っていると自負しつつ、自分の判断を表明するのではなかろうか。自分自身もそうである。だがもちろん、他者からの指摘によって明らかに自身の判断が誤っていると了解できた時には、言うまでもなく持論を撤回して、より "まともなセンス" となるように反省もしよう。
しかし、昨今は、自分のようにこうした "試行錯誤" をする人というのがメッキリ減ったような気配を感じている。つまり、自分の感覚や判断を "まともなセンス" だと自負するほどに、自身で考えようとする人が少なくなったのではないかということでもある。
そして、そうした傾向を助長したり、一般化させたりするような、いわば "無理からぬ" 時代環境やら風潮がいつの間にか広がっているかのような感触を持つのだ。
ひとつ言えそうなことは、自分の感覚や判断を "まともなセンス" なのだと感じさせてくれるような自身の足場となるような環境が、少なからず壊されているという事実がありはしないかと推測している。
人が、自身の主観をもって "まともなセンス" だと感じられるためには、自身が何か "準拠" できる集団なり組織なり文化なりに依拠しているという自覚が必要ではなかろうかと考えている。
たとえば、かつてのこの国この社会にあっては、個々人はかなり安定した状態にあった地域社会や家族に所属していたはずである。そしてその所属が、個々人に対して何がしかの安定したセンスを与え、また相応の自信をも与えていたのではなかろうか。だから、自身のセンスを "まともなセンス" だと自負することも可能だったのではないかと思う。
また、その "準拠" できる集団なり組織なり文化なりの中には、会社やサークル、さらに何らかの結社といった "機能集団" もあったはずである。一頃、揶揄された "会社人間" というのは、会社という組織と文化にどっぷりと浸かって、そこに自身の居場所を見つけていた者たちのことを指していたのであろう。もちろん、当人たちはしっかりと自分の感覚や判断を "まともなセンス" だと信じ切っていたはずだし、現に、そうだからこそ発生してしまった ""不祥事 も多々あったくらいである。
ところが、時代は何をどう変えたといって、こうした、人々が "準拠" していたはずの集団なり組織なり文化なりを、 "有名無実に近い状態" へと変えてしまい、その結果、人々が "根無し草" のごとく "寄る辺ない個人" と化したということではなかろうか。 "有名無実に近い状態" とは言い過ぎだとしても、個人が "準拠" するに足るほどの存在感が無くなってしまったとは言えそうである。前述の "会社人間" にしたところが、それを方向づけた有力な要因であっただろう "終身雇用" 慣行が消え、さらに従来では想像もしなかったに違いない "リストラ" の嵐も吹き荒れたりしたことで、 "会社" というもののイメージが根底から変えられてしまったのではなかろうか。
これは、拘束的な集団などから個人が解放されたと評価できる事態でもあるわけだが、事はそうばら色の側面だけではなかったのかもしれない。
人間というものは、そう簡単に "個人としての安定感や自信" が持てる存在なぞではあり得ないはずである。それらを与える集団なり組織なり文化なりとの関係、相互関係が必須なはずではなかろうか。
現代という時代では、個々人たちが "準拠" できるような "杭" (?)も見当たらないような荒涼とした荒海に、多くの個々人たちは漂うことになっているのかもしれない。そんな印象が拭い切れない。そして、これが、ひょっとしたら自身の感覚や判断を "まともなセンス" だと言い切れない実情の真相であるのかもしれない。
では、自分自身はどうなのかと言えば、正直言って単に "開き直って" いるに過ぎないような気もする ...... (2008.01.31)
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